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希望のかなたのkuuのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.0
『希望のかなた』
原題Toivon tuolla puolen.
映倫区分G.
製作年2017年。上映時間98分。

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが、前作『ル・アーヴルの靴みがき』に続いて難民問題をテーマに描き、2017年・第67回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したフィンランド産ヒューマンドラマ。
ビクストロム役に『過去のない男』のサカリ・クオスマネン。

シリア人の青年カリードは内戦が激化する故郷を追われ、生き別れた妹を捜すうちにヘルシンキに流れ着く。
内戦で全てを失ったカリードにとって、妹を捜し出すことだけが唯一の望みやった。
ヨーロッパ全体を悩ませる難民危機の影響か、無情にも難民申請を却下され、いわれのない差別や暴力にさらされるカリードだったが、レストランを営むビクストロムに助けられ、彼の店で働くことに。
ビクストロムもまた、行き詰った過去を捨てて人生をやり直そうとしていた。。。

苦い皮肉と実存主義に満ちたカウリスマキの名作なんかな(初めてのこの監督作品視聴)。
今作品には、素晴らしい音楽も含まれてたけど、時々、音楽そのものというよりも、その映画で音楽をどのように存在させるかが、その作品の素晴らしさにつながっていると思うことがある。
今作品は、ヘルシンキに住むシリア人難民の物語を中心に据えることで、移民/難民の視点を前面に押し出していました。
ポストモダンの強制収容所から出られないで、官僚的な機関が亡命申請を審査し、何千マイルも離れたところから、自分が逃れた地獄を公式に『戦争』などと呼べるかどうかを決めるのを待つ、若い男性/女性であることの本当の意味を考える手助けをしてくれる。
あるいは、この重荷を背負って、『真のフィンランド人』やその他の国家主義的で外国人嫌いのクズたちと同じ通りを歩くことが何を意味するのか、である。
カウリスマキらしい皮肉な云い回しやけど、連帯の力も描かれていました。 兎にも角にも、カウリスマキは常に自分が語るものから一定の距離を置いているように見える(ある人は彼をスノッブ(上品ぶったり教養ありげに振舞ったりする、鼻持ちならない人)な映画監督と呼んだり、ある人は彼が登場人物を戯画化していると主張するかもしれへん)。
しかし、彼の魔法は、まさにこの距離(加えて大量のアルコール)が彼の映画をとても正直で人間らしいものにしてるし、ちゅうか事実にある。
常にある種の不条理さが漂うけど、個人的にはカウリスマキは、最も正確な意味でのリアリズムを表現していると思う。
視聴を終え、ふと思いに馳せると、この不条理なリアリズムが街のあちこちに適用されているのを目にする(そして耳にする)。
今作品も例外じゃない。
彼の大作じゃないかもしれへんけど、彼のようなアーティストにはこのブルジョワ用語はまったく必要ない。
それは、観てる側が作るもんなんやろなぁと感じた一作でした。
 
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