マヒロ

希望のかなたのマヒロのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.0
シリアから逃れて偶然フィンランドに流れ着いた青年カーリドと、妻と別れて心機一転レストラン経営を始める男ヴィクストロムとの交流を描いたお話。

厳しすぎる現実を生きる人々を、ほんのちょっぴりのユーモアを交えつつ描くカウリスマキ節は変わらず。みんな無愛想で取っ付きにくそうなのに、揃いも揃って親切な人ばかりなのがたまらん。

序盤はカーリドとヴィクストロムが出会うまでの様子をほぼ台詞なしで描いていて、説明なしで分かりやすく描写する力は確かに凄いんだけど、思ったよりも長いので若干退屈さも感じてしまった。
一転、カーリドがヴィクストロムに拾われてらからはすっとぼけたギャグの連発で一気に楽しくなる。行政の立ち入りとか迷走したレストランが寿司屋を始めるところとか、やってることは志村けんのコントばりにベタなのに、やっぱりみんな無表情・無感情なのがより一層笑える。

決して押し付けがましくなく悲嘆に暮れるわけでもなく、淡々と辛い実情を描き、それでいて娯楽映画として楽しく観られるという素晴らしいバランス感覚の映画。監督はプライベートな時間を過ごしたいという理由で今作にて引退を公言しているみたいだけど、それは寂しい…。もう疲れたと言う人にもっと撮れというのは酷な話だけど、まだまだカウリスマキ流の映画が観たい。

(2017.7][1]
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