新潟の映画野郎らりほう

シンプル・フェイバーの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

シンプル・フェイバー(2018年製作の映画)
1.5
【Comment te dire adieu】


タイニーブラックドレスを纏ったステファニー(ケンドリック)が、訪れた刑事の詰問に身悶える ー 自分自身の嘘にその身を締め付けられる様に ー。
そういった心象/概況の顕現や、モチーフの反復/対照で以てもっと語るべきだろうに ― 曲がりなりにもミステリーであるのだから。

回想挿入時点で既にその“後だし”を快くなぞ思わないが、それが姑息な“小出し回想”ときた。一体誰の回想だよ、記憶喪失者ジェイソンボーンか。
常に“見せる/見られる”事に自意識過剰な動画Bloggerは、どうやら自身の過去回想も公開設定にしているらしい ―遺却したい過去/廃忘したい記憶と矛盾しているが―。
主人公の矛盾は一向に構わんが 映画の語りは揺らぐなよ。

そして明かされる“女の闇”の凡庸。
闇とは得体識れないから闇なのであり、御丁寧に全てを可視説明すれば最早闇であろう筈も無い。ここでも過剰回想が裏目である。

その主題系から“鏡や影”が存分に活かせた題材な筈だが、安易回想頼りの講話主義で 物語の絵解きに手一杯なフェイグにそこまで期待するのも酷か。




《劇場観賞》