新潟の映画野郎らりほう

クワイエット・プレイスの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.7
【Silent Majority】


主題論としては『強権に対し声上げる事許されぬ弱者達の苛み』であり、相撲協会、日大アメフト、日本ボクシング連から東京医科大等々 数々の「パワハラ」や「個を蔑ろにする組織の不正」が容易に思い浮かぶ。
その中でも『弱々しい男子二人を守り、遂に声(音)を上げる決意をした二人の女子と、その事を祝福する窓辺から射す朝日』に、今までずっと苛まれ 遂に声上げはじめた世界の女性達と“ MeToo ”の時流が浮かんだ。


《追記》
講話に依る説明に頼らずとも世界及び状況設定を瞬時諒解させる冒頭シークエンス。手話をフィーチャーさせる事で浮き彫りになるその“身体言語性”も映画的であり実に感動的だ。
“瀑布安全地帯でしか叫べぬ男子達”等、ワンアイデアスリラーを装いながらも 2018年時流への目配せには抜かりがない。





《追々記~余話戯れ言等》
本作観賞時の余話戯れ言。
本編上映開始後も外の雑音や館内アナウンスがいつまでも喧しく、スクリーンの一部には外光が映り込んでいる事からドアの開けっ放しを疑う。気になりつつも暫く待てばスタッフが閉めてくれるものと我慢するが、一向に閉められる事はない。
本作「クワイエットプレイス」は声(音)を出すとアウトな設定の為、静かな場面が多く 外の雑音がより気に障る。※タイトルが“静かなる領域”であるのが皮肉だ。
通路側ドア近辺の人が気付いて閉めてくれるかとも思ったがそんな事も無く、20分ほど我慢したものの結局中央付近に席を取る私がやむなく退席しドアを閉めに行った。案の定二枚ある扉は全開放のままであり、近くにいたスタッフのおにーちゃんに扉の全開放と喧しい事を注意し急いで映画に舞い戻った。
その時は直ぐに戻らないと映画が刻々と進んでしまう為、注意は最小限にとどめ 帰宅後に改めてクレームのメールを劇場に送った。
後日責任者から謝罪と社員教育の徹底、再発防止の取り組み、観賞料金返金の申し出があり、訴えを理解してもらった私の心はそこで晴れる。

然し同時に、私に謝罪と返金の旨申し出るのは結構だが、 私以外の他数十人の観客達にはどうするのだろうか?退席こそしなかったが雑音環境は彼等も同じなのだが。それとも、誰も訴えていない=誰も不満を持っていないとゆう事で、私一人に対応して終わるのだろうか。
と、ここまで考えて 今回の劇場側の不手際と観客達の無反応具合が本作「クワイエットプレイス」のメタファーである『不満があっても声上げぬ多数派〈Silent Majority〉』と奇妙な合致を見せているのは単なる偶然か、それとも社会心理学/行動科学的目線で日常を見ている私だけが思う事なのか。




《劇場観賞》