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クワイエット・プレイスのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.5
『音を立てたら即死』
実生活でも夫婦であるエミリー・ブラントとジョン・クラシンスキーが夫婦役を演じ、SFホラー映画と見せかけ家族愛を描いた作品。
子供を持つ人には響くんだろうし、親子で観に行ってもいいんじゃないかなと思います。

<まずはネタバレなしでの感想>
2020年の地球、謎のアレによって人類は壊滅状態。大きな音を立てるとアレが襲ってきて即死。

音を殺してなんとか生き延びているアボット一家だが、母親の出産日が近付いていた。はたして無事赤ん坊を出産できるのか??

状況設定の荒唐無稽さにツッコミどころがなくはないが、単純明快なルール設定がきちんとなされているので観客はルール通りにビクビクしながら鑑賞できる。

ホラーではあるけど、グロ描写や胸糞悪い展開はさほどなく、ホラー映画苦手な人でも楽しく観られると思います。
主人公の夫婦がかなり好感度高いキャラクターなのが良いところ。

映像効果担当は安定のILMなのでアレもなかなかよかったです。


<以下、ネタバレあり感想>


【1】キャラクター
◼︎母親
エミリー・ブラント演じる母親は精神力が強く愛情も深い、好感度の高いキャラクターでした。
息を殺す演技、バスタブのシーン🛁の緊張感/クギのシーンの迫真の演技も最高。
最後銃持ち出したとき突然カッコよくなったのはなんか笑った。

◼︎父親
監督のジョン・クラシンスキーが自ら演じ、ラブシーンが多いわけでもないのに夫婦の絆を感じられた。

いろいろな場面で子供に教えたり指示をするシーンが多く、父親とはこうありたいなと思わせる演技だった。常に冷静で的確な判断をしてきた彼の最後の判断に感動。

◼︎長女
本作のMVP。物語の都合上、序盤はけっこういろいろやらかしたり、親の指示を守らなかったりと、ホラー/パニック映画特有のイライラ要員と思われる描写が多かったけど、そこで見せるふてくされたような演技がよかった。

観客の視点で見ると、ともすればイライラしてしまうんだけれど、それは思春期特有の反応でもあり、彼女なりの罪滅ぼしの気持ち故。

それが終盤だんだんとわかってきて、そして父親は最初から彼女を心から愛してたんだということがわかるラストで感動するようになっている。

トラブルを起こしたりミスをするキャラクターにイラつくのは安全な場所から観ている観客だけであり、どんな失敗をしたって親は最初から最後まで子供を愛している。そこがステキ。

◼︎長男
ビビリだけど勇敢だった。花火のとこ感動する。
この姉弟の描き方ってジュラシックパーク1の2人と少し重なる。なんか見覚えあるなあと思ってたんだけどトラック内で襲われるシーンで思い出した。

どうでもいいけど、個人的にモノポリーが大好きなので、唐突にモノポリー出てきてウキウキした。
チラッとしか見えなかったけど、お姉ちゃんが買い占めた緑グループ(たぶんペンシルバニア通りあたり)のホテルに弟がピンポイントで止まってドヤってた(たぶん)。

2人対戦だと交渉が成立しづらいからなかなかホテル建てられてなくて、あの一撃で致命傷になったんだろうなああとか想像してニヤニヤした。
一発逆転のホテルが直撃したらそりゃランプくらい倒しますわ。

あと、ぶつけて音を立てないように、ホテルのコマが既成のプラスチックじゃなく赤い布みたいなもので代替してたの芸が細かいなと思った。

◼︎次男/三男
スペースシャトルのオモチャでアレは無慈悲すぎる。ぬるいホラー映画だとなんだかんだいって助かるポジションの人が予想できてしまうけど、そこを逆手にとってきた。

日数から計算すると、夫婦が子作りしたのはこの後ってことだよね。
この世界状況で赤ん坊作るのって常識的に考えたら自殺行為なのに、それを選択したのはすごい。

アレを4人で目撃したからこそ、次に生まれてくる弟は家族全員からどれほど大事に愛されることになるかがわかっていたから決断したのだと思う。家族全員が前を向いて生きていくために新しい弟がどうしても必要だったのだ。


【2】演出
◼︎音
キャッチコピーから、終始無音に近い状況からワーって大きい音出して驚かせてくる映画だと思っていたけど、意外と工夫されていた。

基本的に完全に無音ではなく、常になんらかの小さい音がある。よくよく考えてみれば、完全なる無音を強いられたら生存は不可能なわけで、
砂の上をゆっくり歩く際の、砂を踏みしめる音程度はセーフで、枯れ葉を踏んで「シャリッ!」って音が鳴ったり、砂のないトコを歩いて床板がきしむ音が「ギイイッ」と鳴ったりしたら死亡、程度のバランス。

このように、単に0か100かじゃなく、3を超えたら死亡的なルール設定だから、観客は「今たてている音は1-2だからギリセーフ。そのままキープで!キープで!」という感じに集中できるように作られている。

また、耳の不自由なお姉ちゃんの視点のときにのみ完全無音になるとか、川や滝の近くならセーフで声出せるとか、バリエーションも巧みで飽きない。

静かな状況から「音くるぞ... 音くるぞ... 」と思わせておいて、音じゃなくて腕つかまれる絵で驚かせるとかいちいち秀逸で、画面の中で音立ててないのに、客席のお客さんが「ぁあっ!」って声こぼしてるシーンもあったりして面白かった。
自分は口を閉じつつ、声出しちゃったお客さんに「あんた死亡ね笑」って心の中で思うの楽しかった。

◼︎クギ
本作のラスボス。マジえげつない。出産の痛み超えてる。
生活の中で音を立ててしまう危険があるシーンを盛り込もうって考えて作っているんだろうけど、よく思いつくなって感心。
あれで声あげないの強すぎる。

ラストでお姉ちゃんが地下室に降りてくるシーンで「ダメ!クギ!!あるから!!ダメ!!」って叫びそうになったけど何事もなかった。
あれ絶対みんな釣られる。

◼︎ラスト
弱点がわかってさあ戦いはこれからだ!というジャンプの10週打切りマンガ的なラストはよかったと思う。

この後
・弱点突いて打倒してハッピーエンド
・弱点掴むも数の暴力に敗れ去りバッドエンド
の二択になるわけだけど、どちらを描いてしまっても不満が残ったと思う。そこは観客の想像に任せるということでとてもよい。

【3】アレについて
ILM制作のクリーチャーはヴェノムとX-MEN F&Pのセンチネルを足して2で割ったようなキャラでなかなかキモくてビジュアルはよかった。

ただ、ショットガンや斧である程度対抗できるレベルだったら米軍なら制圧できるんじゃないのか??という疑問はある。トラックの天井突き破ることさえすぐにはできなかったレベルだし。

続編が作られるという噂もあるので、次回はアレが1万頭レベルで登場するような絵を見せるのもアリかなと思う。


【4】ツッコミどころ
まあいろいろあるので一応列挙しておく

・わずか数ヶ月で人類が壊滅するほどの脅威には思えなかった。もいちょい数が多いことを示す描写があってもよかった。
雨の日になるたびに軍隊出動すれば余裕で勝てそう。

・音を立てないのが目的なら高性能のジョギングシューズとか履けばよくない??なぜ裸足という苦行を選択するのか謎。少なくとも靴下履いてもいいだろっていう。

・あんなに泣かない赤ん坊だったのはラッキーすぎ。出産時の対策が花火だけって準備弱すぎじゃ。。
アラーム設定したラジカセ何十台も用意するなりもっと派手な演出期待したのにあっさりだった。

・音を立てたら即死世界を生き延びてる割に、部屋の中に音立てそうな雑貨多すぎ。危険多すぎ。

・終盤割と何度も全力疾走してるのに大丈夫すぎ。


【スコア】
★3.5くらいですね。

自宅鑑賞だと雑音入るだろうから劇場で観てよかったです。
途中でトイレ行くのに一時退室する人が忍び足で出ていっていたり、周囲のお客さんの反応を楽しめるのもよかったところ。
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