サラリーマン岡崎

寝ても覚めてものサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
4.7
「『アサコ』って、モーニングの朝子?」
そんなダサい会話で始まった主人公朝子と同じ顔の麦と亮平のホラー話。

朝子はその名前の通り、透き通って静かで落ち着いた女性のように「見える」。
ただ、それはただ彼女が話さないだけで、
彼女は感性の芯が通った女性。

友人がディスられても、彼女の一言でその友人を救う、
タバコ吸っている人のキスは慣れるよという、
麦と亮平の顔が似ていることを普通に友人に話す、
そして、麦が再び現れた時…。
正直彼女を共感できる人とクソドン引きする人で二分されると思う。

そんな彼女を多様な登場人物たちがそれぞれの視点で見つめることで、観客に様々な視点を与える。
登場人物たちがそれぞれ主人公並みにそれぞれのキャラクターを物語っていることがその朝子への視点に深みを与えている。
関西の親友、春代は毒舌でユーモアがあり、国際結婚して豊かな生活をしている。
関東の親友、マヤはコミュ力があり、女優をやりながら、その女優精神を否定された串橋と結婚する。
朝子のある行動な対し、春代は肯定し、マヤは否定する。
それが、彼女たちの性格や生き方からも納得がいくのがすごい。

そして、濱口監督独特の神秘的なカメラワークとtofubeatsによる異次元の少し冷たい音楽が朝子のミステリアス性を醸成させる。
ポスタービジュアルは自然なカップルの光景に見えるが、映画を見終わると、朝子の亮平へのその視線が怖く見えるのは俺だけ?

でも、俺は平凡だから、亮平が好きだし、
朝子は怖いと思う。
けど、朝子は自分が持っていない部分があるので、憧れがあるのは確か。
その憧れが俺を壊すかどうか、少し怖い。
(意気地なしだから、まぁ壊さないと思うけど)