DTAK

さよならの朝に約束の花をかざろうのDTAKのレビュー・感想・評価

2.9
【スゴい頑張った!でも退屈だ!】
『凪のあすから』の東地さんの美術を特大スクリーンで眺められるのは本当に素晴らしい体験。あの絵だけで何秒も画面を持たせることができるのは流石です。
春夏秋冬を表現するのに「田んぼの水を引く門が開く」てのはおお!となった。

ただ、設定、演出、物語構成にあと一歩踏み込みが欲しいところ。
せっかくの機織りの逸話、せっかくの長寿命設定、せっかくの高品質美術、せっかくの茅野愛衣、せっかくの井上俊之アニメーション・・・・非常にもったいない。
このスタッフィングだと『凪のあすから』の良い所が全部ダメになってる。

以下ネタバレ含みます

◯物語のタイム感のアンバランスさな、これが一番辛い。
急に飛んだり、サブキャラが成長しているので誰がどれだかわからないし、「あー今度は何年後だろう?」と思ったら翌朝でしたーとかだったし。見る側に忖度させている。

◯主人公が里から連れ去られたのは唐突だったが、そうなると全体的な話の方向性としては「故郷に帰る」が最優先事項なのに、なんで途中で「赤ちゃんを育てる」にすり替わってんの?

◯「ほら、泣きなよ?」とばかりにドーンと流れる劇伴。劇場版『あの花』みたいで少々くどい。背景美術がスゴいので環境音だけでもよかったのに。

◯主人公たちの心の動きを全部セリフで吐露してしまう脚本。マリーさんなー。特にあのクライマックスで入野自由はべらべら喋らずにただ一言「母さんっ・・・!」って追いすがるだけでこっちは泣ける準備してたぞ?

◯井上俊之さんという超凄腕アニメーターがいるのに、雑でカクカクした動きのドラゴン?のCGなんで出したPAワークス。馬は流石だったけど。

◯後に残らない頭を素通りする主題歌。ただ間奏のコード進行は「おっスゲーやるやん」と思った。

◯主役の声が(歳老いしない設定上仕方がないが)ずっとアニメ声で「おかあさん」になりきれていない、成長をみせていない演技。

◯ぶっちゃけどうでもいい戦争物語。

◯唐突に持ち込まれる茅野愛衣とその娘の悲哀。「私は自由なのー!」って茅野愛衣が最後ダイブしても「あーうん・・・なんで母娘が会ってはいけないのかが説明されてないし、杉田が何も言わないので悲劇ともなんとも」としか

◯で、あのドラゴンの病気はなんだったの?という脚本ぶん投げ。『凪あす』みたいなスケールなの?と思ったらなんでもなかったという

◯平田さんのキャラと久野(茅野娘)のキャラがいずれも「半人半エルフ?」的な設定となっていたのに!せっかく対比できる構造なのに久野の方はセリフで説明されて終わり。平田さんはただの道化役。

◯梶裕貴お前生きてたんけ!え、てかそこでお前死ぬの?後なんでそんなに茅野に執着するの?唐突なヤンデレとかえっ・・・って。

◯どうも全体的に『ロード・オブ・ザ・リング』の既視感かつ廉価版?感が半端ない。建物や小道具のデザインも。エルフばりの長寿設定とかもしかしてマリーさん映画見て思いついた?あとアウトロの長さとかめちゃくちゃ『王の帰還』ぽい感じ笑

◯主人公と茅野愛衣のキャラとの区別が一瞬つかなくなるキャラデ(子供を産んだら髪を伸ばしていい→散髪云々のくだりで余計ミスリード)

◯梶裕貴と一緒に茅野愛衣の救出に失敗した時点で、なんで主人公は佐藤利奈の待つ田舎に帰ろうとしなかったの?それが目的であの田舎から抜け出したんでしょ?なんで帰らずに転々とする必要があるの?

◯序盤、主人公が梶裕貴と茅野愛衣の逢引きを目撃した時に、花から光が舞うような演出を何故したのか。意味があるのかと思いきや何にも出てこなかった。

◯その逢引を目撃したことで主人公が「失恋した」ってことなら、主人公がその里を出る立派な理由になるのに、それを「ドラゴンの急襲」で連れて行かれたため、主人公の物語の動機が判らなくなっちゃった。

◯「母性を覚える」という脚本上の目的のために、幼児に小指を掴ませるのは使い古されてるし・・・2度もやるんであれば二回目は別の意味合いを持たせて欲しい。

◯「たまたま」破水してる息子の奥さんに、主人公が「たまたま」行き会うってのは都合良すぎっしょ?しかも生まれた時に、まさか入野が入れ替わりで死ぬん?というミスリードは全くの無駄だよねあれ。

◯主人公と息子が同棲してるアパートの一室に向かう途中の階段の踊り場のカット。あれ意味ありげに何度か出てるけど全然意味なかったな。

◯なんで主人公はぎりぎりになって死に際の息子に立ち会おうとしたの?たぶん「息子を看取る母」という構図が欲しかっただけなのでは。。。主人公が「あなたのおじいちゃんに会わせて」て言った時に頭が「一体誰のことを言ってるんだ・・・?」と考えてしまって追いつかない。

◯ものすごく長ーいフラッシュバックな。なんかごまかしてない??と思った。

◯息子である入野自由の「大人へのイニシエーション」としての酒飲み一気。そこで形だけ「大人」になった息子と、「形だけ」若いまま主人公の対比が上手く出来てない。毅然として母親たる態度を取りきれてない主人公が勝手に自滅した感じ。
DTAK

DTAK