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TENET テネットのDTAKのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.6
【難しくても、脳みそは着実にLoadingしている】

目はスクリーンをなぞっているが、
頭で理解しながら話を追うのは少し疲れる、この情報量。
ただ脳みそは間違いなくこの話をLoadingしていて、
上映が終わって何回か頭の中で反芻するとその情報や意味付けが一気に解凍される、そんな感じの映画だった。

映画のわからない部分はそのままにして、巷にある解説記事をあえて読まない、
という姿勢もそれはそれで粋だなぁと思わせられる、非常にリッチな体験だった。

IMAXレーザーで鑑賞。ぱっきりとした色彩と、重低音マシマシの音響。
冒頭のオペラのシーンからもう引き込まれる。

オケと電子音をうまく組み合わせたマイナーキーの重厚な劇判が最高すぎてその日のうちに手に入れる。
特に相棒のニールと出会うシーン、747が突っ込むシーン、消防車にまたがってブツを強奪するシーンの劇判は出色の出来栄え。
また、随所に逆再生の音が散りばめられているのも心憎い。

エンドロールで流れるTravis Scottの曲(マスタリングエンジニアにあのマイクディーン師匠!)、
あの重厚なバスドラムと重低音シンセが爆音で鳴り響く(服が振動で揺れる)のを経験すると
あれはオーガズムとしか言いようがない多幸感を得た。

話がわかりにくいのがいいですよね!
昨今のハリウッド(特にディズニー)にみられる、「どんな人にでもわかるようにする」といった野暮の中の野暮を避け、
置いてきぼり上等、むしろテンポの良さを取った点を評価したい。

インセプションと同じく、映画の途中までは「ルール説明」が続く(軽―くだけども)。
今回はルール説明しているタイムライン上の裏では、伏線だったり別の物語も同時に進行しているので目が離せない。

時間をさかのぼるという体験が単なるタイムトラベルではなく、
「1時間前に行く」には「1時間かけて遡る」という設定の妙もうまく機能してる。

なにより途中から主人公が「折り返し地点」を通り、
時間を遡りだすところのテンションの上がり方がハンパない。
終盤の「順行組」&「逆行組」入り乱れての大規模な戦闘もただただ血圧が上がる感じで素晴らしい(戦ってる敵がよくわからないのが後でよく考えるとアレだが)

難しいらしいというのは事前に聞いていたが、映画をちゃんと見てればまぁ話は分かる。
予告編と主題歌を摂取した程度で、ほぼ99%情報をシャットアウトして劇場に臨んだのがよかった。
何人かの知人の話を聞くと「タイムトラベルの能力者の話かと思ってた」「エントロピーとか事前に調べてたので(単語に)引っ張られた」などとミスリードされたという。

スーツが似合う映画だ。インセプションの時もそうだったけれども、
登場人物のオン&オフ、いずれもスタイルが決まっていてかっこいい。(謎のヨットシーンも良し)
「ブルックスブラザーズなんか着てるのか、英国富裕層はテイラーメイドだ」とアメリカ人のスタイルを小ばかにするのもにやけてしまう。

また、時間逆行のマスクは、ガジェットとしてコロナのご時世と相まってバッチリはまってる。
普通の呼吸器にしか見えないのに、妙にかっこよく見える。

この映画体験はIMAXがまちがいなくベストでしょう。
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