emi

ヴィクトリア女王 最期の秘密のemiのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

女王という重責を担う孤独な老女と、その退屈な日常を変えてくれるイケメン男性の登場。
…みたいな視点で見るとなんともいえない気持ちになってしまう1本だが特にひやひやする展開はなく、ずっと友達以上恋人未満、母親と息子のような、奇妙な関係性のまま物語が進行していく。女王にとってのアブドゥルは間違いなく日々の希望だったと思うが、難しいのはアブドゥルの真意が最後までよくわからないところ。アブドゥルは奥さんの存在を途中まで女王にも黙っていたし、インドと英国の関係性や女王に話す自分の出自も、嘘ではないけど真実ではないような曖昧な言葉を選ぶ。そもそも何故目を合せるなと言われていた女王の足に口づけをしたのか。彼が劇中で言うように本当に女王を慰めたかっただけなのか、それとも実際は彼も女王に気に入られたい野心家だったのか…最期に涙を流し、国に帰っても女王像に寄りそうのだから、単純な出世欲とは考えにくいけれど…ちょっと彼の心理描写が軽くてよく分からない印象。
その点、女王の可愛らしくも残酷なわがままは大変リアルに描かれていて良かった。アブドゥルの一言で大金が動き、周囲の人も結果的に振り回されてしまう恐ろしさを女王自身は気にも留めていない。孤独を埋めるように、寂しさをかき消すように、アブドゥルに惹かれていく女王は無邪気な少女のようで、そのギャップが素晴らしかった。ただ女王の描写が良い分、先述の通りアブドゥルの心理描写が薄いのでそこが勿体ない。史実はともかく映画の中だけでもそれらしい理由付けが欲しかった。テンポも良く飽きることなく楽しるけど、もっと深みが欲しかった。
emi

emi