ぎー

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のぎーのレビュー・感想・評価

3.0
【第90回アカデミー賞2作品目】
"観るものすべてが魔法にかかる"
子供を持ったから分かる。
子供は親といるのが一番良い。
唯一無二、替が効かない。
論理じゃなく、替が効かないのだ。
ただ、あまりにも主人公母娘の家庭環境は劣悪。
お金がないとかモーテルに住んでる、とかではない。
もちろん、詐欺や窃盗で生計を立てているのも教育には良くないが、やはり視聴者にとっても、作中のモーテルの住人にとっても、決定的だったのは母親が売春をして生計を立て始めたことだろう。
しかも、娘がバスルームにいるワンルームで、である。
母親が娘を愛していることも、娘が母親を愛していることも分かるからこそ辛いが、そこには正解なんてないのかもしれないが、こういう結末になるのもやむを得ない状況だったと言わざるを得ない。
正直この映画は大半が経済的に恵まれない家庭の日常を描いていて、決してワクワクドキドキハラハラするものではないが、だからこそその、幸せで平凡で平和な日常が崩れようとするラスト、グッと来ざるを得ないのだ。
あまりにも平凡パートが長すぎる感はあるが、このテーマを、このラストを描くためには最善だったと見終わった今、思う。

それにしても出演者の演技は凄い。
めちゃくちゃで、正直人間のクズだけど、しっかりと娘を愛している母親。
肥溜めだけど、貧しい人々のセーフティネットになっているモーテルを、絶妙な匙加減と、温かい心で運営する、穏やかな管理人。
そしてそして主人公の娘である。
劇中ですら教育に悪いと思うのに、こんなに教育に悪い演技をさせて大丈夫かと不安にはなるが、驚異的な演技だった。

舞台となったモーテルはディズニーのすぐ横にあるのに、ラストの一瞬に至るまで、一切作中に登場しない。
別世界で、まさに夢の世界なのだ。
その夢の世界に主人公の女の子と親友が吸い込まれていくラストは、観衆に結末を委ねているように思えた。
貧しいからといって決して不幸なわけではない。
それはモーテルの住人を見れば明らかだ。
が、子供を不幸な境遇に追い込むリスクは高まる。
それをどのような匙加減で捌くかは、世界共通の課題なのだろう。
ぎー

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