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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のkuuのレビュー・感想・評価

3.7
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
原題 The Florida Project
製作年 2017年。上映時間 112分。
劇場公開日 2018年5月12日。
全編iPhoneで撮影した映画『タンジェリン』で高く評価されたショーン・ベイカー監督が、カラフルな風景の広がるフロリダの安モーテルを舞台に、貧困層の人々の日常を6歳の少女の視点から描いた人間ドラマ。
主人公ムーニー役にはフロリダ出身の子役ブルックリン・キンバリー・プリンス、母親ヘイリー役にはベイカー監督自らがInstagramで発掘した新人ブリア・ビネイトを抜擢。
管理人ボビー役をウィレム・デフォーが好演し、第90回アカデミー助演男優賞にノミネートされた。

定住する家を失った6歳の少女ムーニーと母親ヘイリーは、フロリダ・ディズニーワールドのすぐ側にあるモーテル『マジック・キャッスル』でその日暮らしの生活を送っている。
周囲の大人たちは厳しい現実に苦しんでいたが、ムーニーは同じくモーテルで暮らす子どもたちとともに冒険に満ちた日々を過ごし、管理人ボビーはそんな子どもたちを厳しくも温かく見守っていた。
そんなムーニーの日常が、ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる。

今作品は、皮肉にもディズニーワールドに隣接する安ホテルに滞在するフロリダの下層階級の人々の世界に観てる側を没入させる。
ベテラン俳優のウィレム・デフォーを除き、キャストは映画初出演か経験の浅い俳優で占められていた。
脚本・監督のショーン・ベイカーはターゲットでヴァレリア・コットを発見し、クリストファー・リヴェラはストリップのモーテルに住んでいた。
特に子役ブルックリン・キンバリー・プリンスが、大人顔負けのタフで口うるさく、それでいて甘えん坊の少女を魅力的に演じていた。
このキャラは当時まだ6歳だが、多くの点で年上に見える。
観てる側はこのような状況に置かれた子供たちを気の毒に思うのに時間はかからない。
10年後、少女が成長して同じような母親になることは容易に想像できるし、10年前、母親がどのように成長したかを想像することも少なくとも不可能ではない。
ショーン・ベイカー監督はこのようなメッセージは微塵も感じさせず、見事な抑制を見せながら、誰かが下層階級や困難な生い立ちから這い上がることがいかに難しいか、不可能ではないが容易ではないことを教えてくれる。
ちゅうのも、この母親は仕事に就かず、詐欺を働いたり、売春に走ったりする。
たとえ、それが正直なものであったとしても、彼女のあまりにお粗末な振る舞いを見ているだけで、今作品は興ざめしてしまう。
この少女はまだ6歳なので同情するのは簡単だけど、母親もまた困難な環境で育ったに違いない。
だから今作品は、このような悪循環に対してどうすればいいのかという疑問を投げかけるが、賢明にもそれに答えようとはしない。
その代わりに、時にはぞっとするような現実を見せてくれる。
個人的にはシーンを短くする傾向のある編集が気に入ったかな。
今作品の多くは、大きな筋書きを持たずに、単に一連の小話を見せるだけなので、この編集は賢明だったと思う。
また、ウィレム・デフォーが演じたキャラも、昔おった世話焼きの口の悪いオッサン然で良かった。
彼はなんと過酷な仕事をしているんやろ。
しかし、共感と優しさの模範であり、白髪交じりのホテルの支配人という仮面の下にいる善人であり、決して人を批判しない。
彼はその役柄も完璧に演じてて、甘ったるさとか、完全に本物だと感じられないような装飾は一切なかった。
悲劇とその必要性の両方がわかるからに違いない。
ショーン・ベイカー監督は、レンズを使って、アメリカでもあまり知られていない部分を今作品てまは研究し探求ている。
ハリウッドの "典型的な "キャラ・ストーリーとは違い、今作品は間違いなく、多くの観客にラストで大きな衝撃を与えるにちがいない。
やんちゃやけど最終的には無邪気な子供たちの無邪気さを映し出す、かなり美しいエンディングでした。
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