B5版

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のB5版のレビュー・感想・評価

3.7
世間のスタンダードからは外れるも、根が全うな分苦労を背負い込む男を演じさせたらハズレがない男、ウィレム・デフォー目当てで鑑賞。
明快な親子愛物語という予想が良い意味で裏切られました。

ポップでカラフル、夢の国と地続きかのように擬態する建物に住むセーフティネットラインギリギリの貧困者。
夢と魔法、愛と冒険を謳うディズニーランドのすぐ傍にひっそりと生きている存在にスポットを当てた生のアメリカ映画。

フィクションなんだけど嘘がないというか、子供が伸び伸びと無垢ながら程度を知らぬ邪悪も備えていて、創作用に取り繕われた姿のないところだけでもこの映画はすごいと思います。

日々遊びに精を出して、仲良くはしゃぐムーニーたち親子は自分たちのことを悲しい存在だとはまるで思わないだろうに、見てるこちら側は段々と辛くなっていく。
別に決定的な事件は起きない。
昨日と変わらない今日が巡るだけなのに、
いつの間にか真綿で首を締められている、現代の貧困にはそんな怖さがある。

真っ当に助かる手段も権利も知らされずに、内側で芽吹く感情も言語化できない悲しみを癇癪で発散するしかない親を見て、子供は何を思ったんだろう。
良心の呵責さえ教わらなかった悲しみをいつか思い知ることになるその時も、この子はまだ夢と魔法の国へと繋がれるんだろうか。
ラストシーンに色んな想いを馳せたくなる。
B5版

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