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ワンダーウーマン 1984のymdのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
3.4
前作『ワンダーウーマン』はDCEUに新しい風を送り込み、アメコミ映画においても傑作だったわけなので、今作にもとても期待していたのだけど。

確かに前作から継承している良さももちろんあり(というか単純にガル・ガドットの魅力それ自体に良さがある)、1984年のアメリカを舞台にしているものの明らかに現代(制作当時)のトランプ政権をリンクさせたような社会風刺性なんかも取り入れているバランス感覚は巧いなと思う。

アメコミは近年特に世相を反映した社会的な一面を見せることが多いけれど(ザ・ボーイズはその最たる例)、今作も過去のアメリカを鏡にして今のアメリカの問題をアイロニカルに提示している。

ただし、前作はまとまりがあったのに、今作はとっ散らかった印象がぬぐえない。何でも詰め込んでしまえるビッグコンテンツなのは認めるけど、それは整理がついているストーリーと構成があってこそだ。今作にはそれが足りないように見える。

そもそも150分は長すぎるし、全体的に緩慢で冗長なプロット構成だと思う。同じ内容でもタイトに120分くらいにした方がかえって傑作になりえていたかもしれないのに。正直期待値が高かった分、残念な部分が目立ってしまった。

「持つものと持たざるもの」の確執と対立をひとつ大きな命題としているストーリーは王道ながらも感情移入しやすい良い構成だと思うし、バーバラ(クリステン・ウィグ)がヴィラン化していく過程なんかもすごく良かったんだけど。

バーバラ側の解決をしないまま半ば強引に終わらせてしまっている風に見えてしまったし、本作における戦闘パートのハイライトであるバーバラとワンダーウーマンの対決シーンにしても、悪い意味でいつものDCEUっぽい、ダークでガチャガチャしている感じに収束してしまっているのが勿体ない。

それに女性の男性性からの抑圧の解放とエンパワーメントを描くことが当時の気運と重なった『ワンダーウーマン』なのに、バーバラの結末にはその視点がすっぽりと欠如してしまっており、その点においては『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』に届いていない、というのが致命的である。

相変わらずガル・ガドットのワンダーウーマンとしての造形は素晴らしいし、キャラメイクも他のDCEUヒーローと比べて圧倒的なので、それを観られるだけでも価値ある1作なのは間違いない。

願わくばもう少し焦点を絞った固い作品を観たい。
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