新潟の映画野郎らりほう

007/ノー・タイム・トゥ・ダイの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

2.4
【ウォーターフォール】


ホーム上と列車内とを酷薄に分断する列車自動扉。自分の意思と無関係に走り出す列車と、それでも尚 抗おうと駆け出すスワン(セドゥー)の可憐しさ―。
人物の距離化、身体性、扉の用法 を駆使した語りが映画的だ。

鏡(鏡像=虚像)を用いた スワンに対するボンド(クレイグ)の疑念も然り。


ボンドとスワンのキスシーンは、二人の“狭間”に後景から強い陽光が逆光と為って射しており、二人の愛を祝福すると同時に、後に待つ“激しい閃光”をも暗示する―。

ジョージフクナガの意匠は 恋愛心象と好相性であるが、それ以外では ちぐはぐな印象が散見される。


(能面着用の女性化をした上で、氷を鏡面に見立て鏡像化をやらんとするのは解るが)冒頭:少女のアイスウォーターフォールは、高低差や 見上げる/見下ろすの対照化が空回り気味であり、サムメンデス版風情の模倣に止まっている。

最終局も安易簡便な“通話”頼りであり、そこでこそ科白を削ぎ落とすべきだろう。
冒頭の鐘楼や 縫いぐるみ等 登場するディテールが悉く脆弱であるのも講話主義の弊害である。
その結果が、深刻ぶり 未練がましく 引き延ばされた“164分”だ。


最後くらい、否 最後こそ 簡潔にしていただきたい。




《劇場観賞》