もものけ

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

マドレーヌとの逃避行で訪れたイタリアで平穏な日々を送るジェームズ・ボンドは、007を捨てて新たなる人生を歩もうとしていた。
しかし"スペクター"の触手は世界へ広がり、触手によって海底へ引きずり込まれるかのように、ジェームズ・ボンドはまた戦いの渦に巻き込まれてゆくのだった…





感想。
まさかの前作から続投ボンドガールであるレア・セドゥと、イチャイチャまったりなラブストーリーを見せつけられて、正直ゲンナリしてしまい007も監督が変更されれば世界観までも改悪変更されるのねと思いきや、いきなりのアクションへと変わり、果てはあんなに愛し合っていた女をあっさりと捨ててゆくジェームズ・ボンドに、そうそう007に"愛"なんていらないんです、行きずりの"恋"だけあればよいのですと、その潔さにレア・セドゥが可哀想になるほどの冷たさが、まさに英国殺人ライセンスを持つ諜報員ですよねと頷ける展開からの、テーマ曲をMVにしたオープニングへと繋がり、塩基配列された銃が火を吹くかっこよすぎる映像に酔いしれながら、やっぱりダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドは面白いやと、そんな想いが沸き起こるオープニングが既に30分も掛かっていることに驚きが隠せませんでした。

お決まりのバイク・スタントに登場する"トライアンフ Scrambler 1200 "の芸術的なまでの美しさと、迫力ある短いながらのアクションが素敵過ぎます。
個人的にはトライアンフ・モーターズのモーターサイクルが、世界で一番美しさを兼ね備えた、最高の出来と思う私にとっては、このシーンだけでも巻き戻して3度眺めるほど。
ウットリとボンドガールそっちのけで魅入ってしまう、魔性の女(モーターサイクル)でございます。

今作品は、きちんとジェームズ・ボンドの兵器達が登場しており、カー・スタントの中に最新鋭の兵器達が奏でる銃撃と爆発が、アストンマーティンDB5のレトロさにギッシリと詰まっており、Qのいい仕事ぶりが演出されていて満足です。

イーライ・ロス監督の「ノック・ノック」でセクシーさ満点に狂気を演じたアナ・デ・アルマスがボンドガールですが、とにかくチャーミングな美しさが際立っており、初々しさ溢れる役柄がピッタリです。
表情での表現力が高い女優で、個人的には注目していますが、ゴージャスで美貌を最大限に活かしたドレス姿で銃を構え様になるカッコよさと、なんと格闘アクションまでこなすセンスの良さと、対称的なチャーミングさが出来るパートナーとしてジェームズ・ボンドを支えるキャラクターとして立っており、チョイ役なのがとても惜しいほどでございました。
「ブレードランナー2049」でドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がヒロインに起用するのも頷ける逸材ですが、あまり出演作品がないので残念です。

前作でマドレーヌの敵である能面の男がいよいよ登場。
ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの敵役になる役者達が全て演技派の名優ばかりで、怪演するラミ・マレックが不気味な静けさを持った男として演じており、シリーズをアクション映画としてではない深みを与えております。
更に前作スペクターの親玉であるブロフェルドであるクリストフ・ヴァルツも登場していて、とてつもないダブルキャスティングという豪華さであります。

映像で楽しませてくれる世界紀行によるロケーションの美しい景色が良いです。
毎作品、世界中を観光しているような気分が味わえるのも醍醐味。
そしてゴージャスな建物の数々や高級車と高級衣装が目白押しで、セレブな気分も満喫。

次世代フラッグシップモデルであるアストンマーティンのDBSスーパーレッジェーラというスーパーカーも登場しますが、個人的には旧車のV8サルーンの丸目2灯による美しいフォルムに目が釘付けでした。

アクション演出に重点を戻した007シリーズなので、"スペクター"よりはそれなりに鑑賞できました。
ドローンに乗って潜入したり、2マンセルでのアサルトライフルを担いだミリタリー的なアクションも良いです。

コロナウイルスをイメージしたかのようなウイルス兵器を追うストーリーは、タイムリーなネタでもあって他人事ではないですが、あまり掘り下げておらず緊張感は漂ってきませんでした。
そしてマドレーヌとの"愛"がテーマに戻ってしまう後半戦の長さが、007っぽくないイメージでして、個人的には2時間半を長く感じさせられ、悪役の背景も薄っぺらい描き方なので感情移入できずに消化不良です。
ヘンテコな日本とジェームズ・ボンドの"土下座"にドン引きもあります。

ダニエル・クレイグ版の締めくくりともあって、感動を煽りたかったのでしょうが、ラストに死ぬまでの演出の長いこと長いこと、押し付けがましさが必死すぎて、ダニエル・クレイグ版が終わることの残念さは伝わりますが、ジェームズ・ボンドの最後としての気分は盛り上がることなく普通にエンドロール。

アクションが多かったのが救いで、それなりに楽しめたので、3点を付けさせていただきました。

ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)よ、永遠なれ…
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