ケイスケ

友罪のケイスケのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
3.3
ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり…。

様々な形で人を死なせた経験を持つ人々の群像劇。同級生の自殺を止めることが出来なかった益田(生田斗真)。息子が無免許運転の事故で子供を死なせた山内(佐藤浩一)。そして児童殺人事件を引き起こした鈴木(瑛太)。彼らのメインの物語に更生施設の女性や無理矢理AVに出演させられた女の子の話が絡んできます。

映画を見始めて思ってた人が多いと思うんだけど、佐藤浩一の役って少年Aこと鈴木の父親じゃないんですよね。すぐに息子が出てくるんですけど特に少年Aや主人公とは絡まないんですよ。なんで佐藤浩一を少年Aの父親にしなかったんだろ。少年Aが殺した子供の被害者家族が出ないから、イマイチどれだけ凄惨な事件を起こしたのか伝わりにくい。

様々な形で人の死に関わった登場人物を出したかったのでしょうけど、欲望の為に子供を惨殺した人間と、息子が事故で子供を死なせた人間を同列に語るのは少し違う気もします。ましてこの映画の少年Aのモデルは明らかに「神戸連続児童殺傷事件」の犯人ですからね。ここまでの凶悪犯は他の事件の比較対象にならないでしょう。

加害者の贖罪や、事故で他人の命を奪った人間は幸せになる権利が無いのか?など考えさせられるテーマは多々ありますが、この作品で言いたいことが「とにかく生きていくしかない」という結論だけなのもどうかと。これは完全に余談なんだけどラストの生田斗真の慟哭が長すぎて途中から「うるせえ!」ってなった。

役者陣の演技は良い。特に瑛太はよくこんな役を引き受けたなと感心しました。AVに出演させられた挙句にレイプされる美代子を演じた夏帆も体当たりの演技ですよね。記事を流した女記者に対しては本当にムカついた。「そうやってまたキレるの!?」じゃねーよクソ女!

瑛太と夏帆が町工場の人たちとカラオケに行くところなど好きな場面も多いんですが、全体的に話にまとまりが無くチグハグな印象。ちょっと惜しい作品でした。