じゅ

ブラッド・スローンのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ブラッド・スローン(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

call the shotとか言ったら「采配を取る」って意味になるらしい。そんなら題名の『Shot Caller』って、仕切る人とかそんなような意味になるか。

真っ当と順風満帆を絵に描いたみたいな男が酒飲んで車乗ってよそ見して事故って、人死が出たからということで殺人犯たちと同じ刑務所に入れられる。
「目を付けられたらずっと地獄を見る」との忠告を受けて、絡んできた囚人と意を決して殴り合いの喧嘩をしたのをきっかけに、ギャングのグループに引き入れられる。グループを仕切る者(Shot Callerその1)の指示を受けてグループ同士の乱闘に参加させられた際、相手を刺した瞬間をカメラに捉えられ、追加の刑期と懲罰房行きをくらう。
懲罰房には次なるShot Callerのレッドウッドがいて、さらにその上には刑務所全体を支配するビーストというShot Callerが。男はビーストに家族の命をネタに強制され、仮釈放中に150万ドルの武器密輸ビジネスを任される。ショットガンこと仲間の男が警察の密偵をしていることを突き止めて始末し、とある準備を整え、取引の場所へ。しかし警察が待ち伏せしており、取引は潰れて男はあえなく刑務所へ送り返される。
ビーストに呼び出された男。手には隠し持った小物。外で整えていた準備とは従わなければ家族を殺すと脅したビーストを抹殺するための準備で、男は意図的に取引を潰してビーストと接触するために捕まっていた。隠し持った鍵で手錠を外し、仕込んだ剃刀の刃をビーストの動脈に押し込む。つい数分前まで支配者だった者の腕から力が抜ける。彼の返り血に塗れた男は、今後は俺が仕切ると宣言してみせた。


刑務所なのに看守じゃなく囚人が支配してて、しかもグループを仕切る囚人をさらに仕切る者がいる社会構造ができてるとかいう完全に裏で闇なところに、完全に表で光な社会に生きてた男が急に放り込まれたんだよな。
何もかもが違いすぎる"社会"に仕切られる側として呑み込まれてくしかなかったけど、乱闘での傷害をカメラに撮られてたとかいう目も当てられん出来事が転機になった。レッドウッドが看守を殺して死刑囚だかの房に移送されたってのもあって、ビーストに謁見することになって、結果的に男は王に成り代わることになった。

そんなつもりは無かっただろうけど、何らかに対する突出した意志か執着か何かがある者は必然的に上り詰めてくことになってたのかもしれん。あの世界観では、意志とか執着を守るなり貫くなりすることと、下克上でのし上がることが等価っぽかったから。その意志ってのが男にとっては(元)家族を影ながら守ることだったってだけ。
あとは腕力勝負みたいなとこあっただろうけど、他のポテンシャル筋肉たちは守りたかった何かを苦汁を飲んで手放してたり、そもそもそんな強い想いを持ってなかったりってことだったのかな。


男はあの刑務所のShot Callerのてっぺんに立ってその後どうするんだろう。
あの元軍人で協力者の青年は取引の場から逃したし、隠してた残りの銃の場所は警察に流したし、所内の裏社会っぽい活動は潰してくんだろうか。自分が頂点に立って上から強制的に潰してく的な。
いやでも「動物みたいに殺処分はごめんだ」と看守を金で買ったし、死刑にならずに所内で君臨し続けるためにはちゃんと仕切って儲けて力を維持しなきゃだよなあ。

まあどうするにせよ、自分がビーストを殺したように、誰かが彼を殺すだろうな。表の社会の司法ではなく、同じ裏の社会の誰かが。
そうやってShot Callerの座が次から次へ受け継がれてくんだろう。


最初に「実際の出来事に類似する内容があるかもしれないけど気のせいですよ」みたいな断りがあったな。
勘繰ってしまうわ〜。
じゅ

じゅ