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花筐/HANAGATAMIのkoyamaxのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
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見知った日常、時間、同じ秘密を共有した仲間が自分を置いて、どこか遠いところへ行ってしまう。
いままであった世界の意味を知っているものは自分しかいなくなり、自分もまたその記憶から遠くはなれた地点でひとり生きる。その後ろめたさ。。

大林監督作品に特徴的なもののひとつとして「違和感」があると思います。
インディーズな映像製作プロセスによる特徴もあるとおもいますが、映像だけでなく、「違和感」自体がテーマのひとつであるような気がします。

劇場デビュー作の前に創った脚本だそうですが、長年描き続けてきた「違和感」の原点を語り明かされた思いがします。
HOUSE以降の作品はこの作品で描いた事をベースにした変奏だったことにも気づかされました。

主人公の常軌を逸した異様なテンション。
巨大な月、不穏な夕暮れ。
ほぼ全て合成により創りだされた画面。
切り絵的な色彩構成。
感情的にならないセリフ回し。

日常からほど遠く、ことごとくリアルからかけ離れた表現を用いてきますが、目に見える事象を超えて、抽象化された暁にある何かが見えてきます。

目が覚めたあとの気持ちも含め、変な「夢」をみたときのムードをそのまま形にしたような感じもあります。
ただ、不思議でシュールと片付けられるものではなく、その時抱いた思いがいつまでも残ります。

美しく、不気味。その隙間に垣間見える寂寥感もまた。
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