タキ

殺人者の記憶法のタキのネタバレレビュー・内容・結末

殺人者の記憶法(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

主人公キム・ビョンスがアルツハイマー型認知症の殺人鬼という設定がまず面白い。少年時代に虐待を繰り返す父親を殺したことから端を発し殺されて当然のクズを殺すという名目でいったい何人殺しているのかわからないほどの殺人を犯し続け、密かに竹林にうめているようだが、一方でひとり娘を溺愛し忍び寄るミン・テジュの魔の手から娘を救いたいと願いながらもどんどん進みゆく症状に苦悩する姿に頑張って!思い出して!とつい応援してしまう。殺人鬼を応援。このアンビバレンス。
彼の視点は何が真実で何が妄想なのか曖昧でそれがストーリー上の度重なるどんでん返しとなっていて見るものを飽きさせない燃料を投下し続けるわけだが、最後の最後まで過去の殺人鬼と現在の殺人鬼のミステリーは藪の中という仕立てになっておりうまく次作につなげてはいるが本作のみではモヤッと感は残る。ただ一つの真実はキム・ビョンスは血の繋がらない娘を心から愛していたということ。ミステリーというより父娘の絆の物語として鑑賞した方がいいかもしれない。
それから認知症といえばこの状況下では先の見えない辛さばかりを思うが忘れることも悪いことばかりじゃないと思えるようなシーンを入れてくる神経が凄い。もう凄すぎて黙るしかない。ソル・ギョングの芝居の上手さありきだと思うが、その暴挙をなんと成立させてしまっていた。ビョンスが映画館で娘を血眼になって探している最中にフッと目的を忘れてしまい映画を見て爆笑するシーンとかストーリーを台無しにしかねないことを堂々とブッ込んでくる勇気。韓国映画によくある本編とはなんら関係のないナゾのコントシーンとは一線を画す迫力があった。あり得ないことを力強くそうなんですよ!と大声で言って見るものを丸め込むスタイルはミン・テジュのママにアイロンで殴られた頭がい骨の方に軍配は上がる。ミン・テジュはママを恨んでるってことでいっか!となったのでだいぶ韓国映画脳になってるかもしれない。
それにしてもアン所長(オ・ダルス)とキム・ビョンスの関係がやけに親しくて不思議だった。アニキと言っていたが血縁ではなさそうだしどういうアニキなのか。とにかくおっちょこちょいだがいい人だった。合掌。
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