イエス

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのイエスのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

<執筆中|11/21(水)更新>

 鏡像のなかで分裂するヒロインのリン。暗い部屋で“誰か”を前にし、彼女は取り調べに対して淡々と、その身の潔白を証明する。その表情に反省はなく、そして、彼女の顔から思わず笑みがこぼれるのだった——
 マークシートが塗りつぶされ、80ある設問の答えが本作のタイトル『BAD GENIUSBAD(本国タイ題:CHALARD GAMES GOENG/邦題:バッドジーニアス 危険な天才たち)』を形づくる。左右に4小節、上下に20の設問が塗りつぶされたマークシートによってタイトルが浮かび上がり、オープニングの設問の並びが、リンとバンクの役割を左右の位置付けで暗示する。
 進学校に特待生として迎え入れられたヒロインのリン。決して裕福ではない彼女は、学校長との面談の席で通学にかかる費用を思わず口走る。左隣りに座る父がリンの左手を握るが、静止に入るも彼女は止まらず続ける。だが、その甲斐もあって、彼女の頭脳を評価する学校長はあらゆる費用を免除すると申し入れし、父子家庭のリンは入学の意志を固めるのだった。
 学生証の写真撮影の際、リンはグレースに髪を整えられ、メガネを外すことを勧められる。純粋な白色のリボンをした同級生のグレースの厚意に、リンは右足を一歩後退りする。その一歩が、彼女の人生を踏み外してしまうものだと知らずに。
 ある日の図書館。友達になったグレースから、リンは数学を教えてくれと頼まれる。最初は断っていたリンだったが、グレースの無垢な表情に圧され、リン先生を引き受けることに。数学のテストの日を迎え、配られたテスト用紙に、リンの脳裏では先日の一場面が過る。テキスト通りの設問が同じ内容でテストになっており、憶えていれば解ける問題だと気づくリン。後ろの席のグレースに伝えるのだが、彼女のおつむに愕然とする。そして、友達を助けたい一心のリンは決断する。
 マークシート方式のテストはABCDを塗りつぶすことで回答が選択される。だからこそ、解き終えた答えは消しゴムに記入でき、それを書き写すことでグレースに答えを“教える”ことができるとリンは実行する。右足の革靴を脱ぎ、靴底に消しゴムを入れると、彼女は教師の目を盗み、後ろの席のグレースに革靴を蹴るのだった。それはまるで、学生証の写真撮影で後退りしたリンの右足のときのように。床を滑り、踏みつけたグレースの右足で止まる革靴。リンの決断が友達のグレースを助けたのだった。
 テストの合格祝いに誘われるリン。場面は豪邸の庭にある家庭用プールに移ると、グレースのボーイフレンドであり、大富豪の息子パッドが登場する。“テスト中に消しゴムを貸してくれる友達”を熱望するパッド。グレースのリン自慢が、パッドの悪知恵を働かせる。パッドはリンに“一人につき3,000バーツ”を報酬で支払うと提案する。(日本円で約10,000円/タイの初任給平均は約24,000バーツ:約70,000円)家庭の懐事情を知っているリンは提案に揺れるが、学校への賄賂と裏事情を話すパッドに迷いがなくなるのだった。
 父の机の引き出しから領収書を盗み見たリン。学校への賄賂を示す現実に彼女は悩む。父への不満が、離婚した母との思い出を刻むピアノに向けられ、クラシック音楽の『エリーゼのために(作曲:ベートーヴェン)』にその想いがぶつけられる。その瞬間、彼女は閃く。薬指から奏でられる旋律が“ビジネス”の糸口を見出し、右足で始まったカンニングの手助けは右手へと移行。ピアノ・レッスンという名目で、物語は次の段階へと進む。
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