マヒロ

マルリナの明日/殺人者マルリナのマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
人里離れた家に住むマルリナは、夫を亡くしたばかりで喪に服していたところを強盗団に襲われる。料理を振舞わされた挙句身体を求められたマルリナは、策を巡らせ相手を返り討ちにしてしまい、その行為の正当性を主張するために遠く離れた警察署に向かうことにする。しかし、遅れてやってきた強盗団の生き残りに目をつけられてしまう……というお話。

なかなか観たことないインドネシアの映画だが、中年女性が主人公の西部劇風味のロードムービーというなかなか不思議な作品になっていて、唯一無二の魅力があった。
狙ってるのか分からないシュールな演出が特徴的で、例えば前述の亡くなった夫のミイラ化した遺体が普通に家の中で座った状態で置いてあったり(何の説明もなくそこにいるので途中で気付いてビビらされた)、マルリナが返り討ちにし死んだ男が幽霊のように彼女に付き纏うが何故か常に楽器を演奏していたり、超現実的な描写がちょくちょく挟まれる。何が起きてもほとんど動じないマルリナの肝の据わり様も相まって、そのシュールさがオフビートなコメディ映画っぽさすらある。
女性を食いものにするような男達への反撃がメインテーマだと思われるが、そこも容易に溜飲を下げられるような分かりやすさはあえて避けているようにも見えて、娯楽要素を意識するあまりそのメッセージ性がブレてしまっている作品も観ているので、そこら辺真摯にやってるところは好感もてた。

面白かったかと言われると何とも言えないところで、間違いなく心に残るようなシーンはいくつかあるが、全体的にはあっさりしていて物足りなさも残る感じ。ただ、題材的にはエクスプロイテーション的に出来そうなところをひたすら禁欲的に抑えた描写に終始し、それでいてちょこっとユーモアを加えてくるような姿勢はすごい好きで、ポテンシャルは感じる映画だった。

(2022.211)
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