エミさん

アリフ、ザ・プリン(セ)スのエミさんのレビュー・感想・評価

3.1
TIFFにて。
台湾のLGBTQ映画。この映画は、性意識というよりは、よりアイデンティティや個性といった、もっと1人の人間としての在り方にスポットを当てている作品です。

台湾は、セクシャルマイノリティーの人口も多く、先ごろ、同性婚許可の法案も通って、社会的には先進的なイメージを想像していましたが、この映画も同様に、個性として見てくれる人は増え始めてはいるものの、相続や戸籍など社会形成においては、まだまだ発展途上で、生きづらさは変わっていないことが理解出来ます。

主人公アリフも、台湾北部に残る伝統部族の跡取りという定めを背負いながらも、自分を偽らない人生を送りたいと願う、個性を持った1人の人間です。同居するルームメイトで美容師仲間のレズビアン女性ペイチェンに支えられながら、性転換手術を希望にして、昼夜働いて貯金を貯め、投資にもお金をつぎ込んだりして毎日を過ごします。妻帯者の男性に恋をしたり、父に勘当されたりと、アリフの生きている道も決して平凡ではありません。

生き続けるということは、常に何かを選択していくということです。目の前にある選択肢が正しいかどうかは解らないし、そう選択したその人を、受け入れる人もいれば拒否をする人もいる。アリフの生き様は、その選択が、たとえ全てを失うことだったとしても、それを乗り越えて生きる勇気があれば、目の前に無かった別の選択肢だって作ることも出来ると教えてくれていました。アリフが最後に選んだ選択は、人生に翻弄されながらも、そこから立ち上がって、自分に正直にありたいという根底のブレない姿を見せてくれました。

しがらみだの、なんやかんやと、人生には色々あるけれど、どんな人でもたくさんの選択肢に負けず生きていけるといいのになぁ〜と、考えさせられました。