新潟の映画野郎らりほう

忘れじの面影の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

忘れじの面影(1948年製作の映画)
4.1
【Romantic ~ 非実像】


男の(実像ではなく)面影に恋した少女は、自らを(男にとっての)片影と化す事で その恋を永遠のものに昇華/成就させる―。


恋慕う男を階段上から見下ろす少女の切ない窃視ショット。
数年後、憧れの男と共に階段を昇る彼女の姿が、階段上から“同構図”で見下ろされた時、この映画其れ自体が 強く“面影(観客の記憶)”を遡る旅である事を諒解する。

同じ構図、同じ状況、そして同じ言葉―。
映画は徹底して記憶を反復する。そして、以前と現在との僅かな ―然し大きな― 差違を強く際立たせてゆく。
その事に気付いた時点で、時は酷薄に進んでおり もう二度と戻る術無き事は自明である。


「繰り返される世界鉄道旅行」の張りぼて/虚飾具合。
= 非実像の中 / 面影の中にしか恋は成就し得ない ― その残酷と共に獲得される永遠性の安寧〈二律背反〉が“忘れ難い”。




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