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ファイティング・ファミリーのKKMXのレビュー・感想・評価

3.8
 カ…カテェ!フィルマきってのおすすめマスター・こぅ閣下に指摘されて関心を持った本作。ロック様(俳優ではなくスーパースター…この呼び名はWWEではプロレスラーを意味する)信者としては観ないワケにはいかず、鑑賞しました。

 本作、ロック様が実際に制作に絡んでいるとのこと。WWEがドップリと絡んだ映画ですが、ハルカマニアが主演したクソ映画『ゴールデンボンバー』とは大違いでした!あの映画、目ん玉飛び出るストロングスタイルのゴミ映画だった。ま〜ハルカマニア主演ってだけでゴミ確定だがな!(俺はハルク・ホーガンがビル・ワイマンの次くらいに大嫌い)。

 ちなみに、WWEのボスだったマクマホン氏ことビンス・マクマホン元社長が性的虐待・性的人身売買(スゲー表現!)で訴えられ、おそらく一巻の終わりを迎えつつあります。
 しかしビンス…ビンスは団体最悪のヒールとしてリングにあがり(プロレスラーリスペクトがある故に技は使わない…この辺はビンスのデリカシーを感じたものだったが)、悪のオーナーとして暴虐の限りを尽くしつつ、最後はストンコにスタナーされてリング上でケツ丸出しで泡を吹くという千両役者ぶりをみせていましたが、本当に悪のオーナーだとまったく笑えない。ビジネス的にエグいのはわかっていたが、ちゃんと裏でもエグかったとは、逆にギャップがなさすぎる。たぶん1人ではなく、これから次々と明るみになる可能性があるね。しっかりと裁かれてほしい。これからのWWEはハンターさんがキチンとやってくれるでしょう。

 そんな帝王ビンスはワインスティーンらと同じ最悪のクズとして歴史に名を残すことになりそうですが(訴訟内容見るとちょっとあまりにもヤバすぎて引くレベル、マジでビンス人として終わってる)、逆にロック様はWWEの親会社の取締役に!ホントにロック様、このまま大統領になっちゃうのではないか、と思うほど大出世しております。

 というわけで本作で、今をときめく(というかずっとトキメいている超絶偉人)ロック様の妙技を味わいましたよ〜!ファイナリー!


 早速ロック様、序盤に登場!本作、ロック様はロック様役だッッ!本人役!ちなみにロック様は一人称が『The Rock』なのですが、これはロック様というキャラは自分を神様だと思い込み、自分以外はすべて下々のモノと思い込んでいるからだ、とロック様ことドゥエインさんが自伝で述べておりました。この発想だけで小1時間笑えます!あと思いついたから書くけど、ピープルズエルボーを思いついただけでもロック様偉大すぎ!あのピョ〜ンと相手を飛び越える姿がそこはかとなくマヌケで、でもロック様の顔芸までついているから結局こちらもエレクトリファイ!ロック様の妙技を味わいな!

 主人公の兄妹がイギリス遠征したWWEのバックステージに行くと、なんとロック様に遭遇!感動した兄妹はロック様と話したあと、帰ろうとするロックに何度も話しかける。この反復ギャグは非常にドリフっぽいというかアメプロ感があり好きですね。個人的にWWEは凄い身体能力の人たちがやるドリフだと思っている。ケン・シムラだって様式ギャグばっかやって、常に新鮮な笑いを取ってましたし。
 兄妹の質問に対して、ロック様は話させようとして黙らせて「お前らの言うことなどロック様には関係ナシッッ!」(←ロック様の持ちギャグ)と1発カマした後に、キャラクターに自分を投影させることが大事であると伝えます。これは超重要で、結局自分自身と乖離したキャラをやっても生きないんですよ。リアルがないとマジックは起きないです。ロック様自身も、「自分を神のように思っているエラソーなキャラというのは、自分の中にあったので、それを拡大して表現した結果、ザ・ロックになった」と自伝で述べておりました。
 ただ、自身をキャラに投影させても自分に面白味がなければパッとしないのですが。まぁ、これが本作のコーチ役の言う「輝きの有無」に関連してるんでしょうな。

 後半、主人公ペイジがデビューする直前でもロック様登場。ペイジの家族に電話を掛けるけど、ペイジの父親がロック様にネタをやれ、と振ってロック様が『ロック様の妙技を味わいな!』とキメるのですが、父親は「イタ電か」と電話を切る小ネタがWWEっぽい。やはりキメ台詞の後にくい〜っとピープルズアイブローがキマらないと本物かどうかはわかりませんね。この場面はさほどいいこと言っておらず不完全燃焼でした。


 物語としては結構シリアス。ちゃんとした骨格を持った、正統派のヒューマンドラマだと思います。本作の核は、単に成功を掴む話というよりも、敗者にもスポットを当てているのが特徴です。WWEを観ていた時期はゼロ年代前半なんですが(エディ・ゲレロの急死によりWWE観れなくなった)、新キャラが続々と出ては3ヶ月で消えていく姿を見まくっていたので、とにかくWWEは敗者の歴史なんだと思います。モルデカイとか今何やっているんだろう?テストはだいぶ前に死んだしな…
 今作の敗者は主人公ペイジの兄・ザック。ザックは妹ペイジとWWEのトライアウトに挑戦しますが、ペイジのみ採用されザックはダメでした。夢が砕けたザックのその後を、本作はかなり執拗に描いています。これがいい。
 特に、きょうだいで片方採用というのは厳しい。スージー・クアトロのドキュメンタリーでも近いシチュエーションがありました。姉妹でグループ組んでましたが、スージーだけデビュー。その後姉妹はどうなったかというと……その時から半世紀経っているのにも関わらず微妙!姉妹はあんまりスージーを応援していない。いや〜やっぱりそれくらい怨嗟が残るのだと思います。敗者のままならなさをちゃんと描いているのがさすがロック様!ロック様もアメフトで敗者になり、WWEでも1回正統派キャラでコケて苦難を味わってますからね。ザックの悲しみ、胸の痛みは非常に伝わりました。

 あと、ペイジの同期の女子たちとの絡みもなかなか良かったですね。ペイジ以外はモデル崩れでレスリングスキルはまだまだ。なのでペイジは彼女たちを軽視しますが、実は彼女たちの方が大人で、かなり苦労していた背景もあったりします。だから、結構ペイジのイタさが目立って、ペイジが成長して彼女たちのレベルになっていく感じも悪くなかったです。

 欠点はラストの展開。ちょっと急で、ラストバトルで観客の支持は得られないと思うよ。事実をなぞっているようですが、wikiを読む限りだとやっぱり観客には受け入れられていなかったようです。急なプッシュってファンは引きますからね。実際には、ヒールターンとかいろいろ試行錯誤があって、少しずつペイジのキャラやレスリングが受け入れられたのでは、と思います。


 フローレンス・ピューはかなり熱演していたと思います。顔に関しては、かなり本物ペイジに近い印象。ただ、ペイジって結構長身みたいで、実際は小柄なピューとは結構イメージ違いそう。それを近づけているのだから、やはり俳優とは大したものです。

 というわけで、本作は光と影で言えば、光面でのプロレス映画のど真ん中!(影、すなわち逆方向のど真ん中は『レスラー』)目ん玉飛び出るストロングスタイルのプロレス映画と言えるでしょう!オオ…恐れ入谷の鬼子母神ッッ!ゴマシオもビックリだッッ!
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