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カメラを止めるな!のFilm日記係のレビュー・感想・評価

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)
4.7
映画全体を通して、伏線回収をふんだんに生かしており、観ているこちらを上手い具合に裏切る意外性のある楽しい映画だった。

ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが現れ、キャストや撮影隊が逃げ惑う姿を、1台のハンドカメラでワンカットで映し、そこに隠れた人間ドラマを種明かししていくというものだった。最初に出来事を見せ、中盤から時間をさかのぼってもう1度掘り下げるという映画の作り方は大変面白かったし、予想していない展開だった。

正直序盤のゾンビと闘っているのをワンカットで映すシーンを観たときは、誰がカメラを回してるの?とか、何でそんな行動をとるの?など、設定やキャラクター動機にツッコミどころ満載で、しかもカメラワークも上下左右に揺れるのでだいぶ酔った。

それでも後半には、そうした疑問や不満がちゃんと解消されて、映画を観終わったときには、スッキリとした気持ちに至り、その分面白いという印象が大きくなった。映画館で観ていて、みんなが声を出して笑うところも多く、近年観たコメディ映画よりは、圧倒的に面白かった。

また、中盤に各キャストや撮影隊の性格や特徴を映すことで、それが終盤の種明かしの伏線として効いていた。

ただ生放送のテレビ番組であるという設定をもう少し生かして、視聴者側の目線を入れたりすると、もっと深みが出るかなと感じた。それでも、視聴者の目線をあえて入れないことで、この37分ワンカットのゾンビ映画は世間的には全く注目されてないが、現場では役者やスタッフ全員の心が浄化され、皆が幸せになって終わるところに重点を置いたのだと思うと、納得がいった。

音楽も序盤はまぁまぁ耳障りな部分もあったが、中盤以降は入れるタイミングや曲調なども的を射ていて、ストーリーに良い効果を与えていたと思う。

そして、この映画のエンディングでは、序盤のワンカットのシーンの撮影風景を見せており、序盤と終盤の撮影は別物であることを認識し、且つ改めて序盤のシーンがワンカットで撮られていることの凄さを再確認させられ、エンディングの使い方にも上手さを感じた。

意外性を生かし、伏線回収を完璧に行うという、近年のお笑いの基本にとても忠実な作品だったので、漫才やコントが好きな人はきっとこの映画が好きになれると思う。

面白さ: 1.0 脚本:1.0 人物・演技:1.0
映像:0.9 音楽:0.8
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