KKMX

ドント・ウォーリーのKKMXのレビュー・感想・評価

ドント・ウォーリー(2018年製作の映画)
4.3
事故で四肢が麻痺したアル中ダメ男が風刺漫画家として再生していく、実話ベースのガーエー。

所謂感動作と言えなくもないのですが、人間が持っている愚かさや尊さが生々しく描かれており、リアルな手触りが感じられてとても豊かな作品。面白かったです。

リアルさの根拠は、実話ベースという要因もありそうですが、主演の怪優ホアキン・フェニックスに依るところが大きいと感じました。再生パートも良いのですが、ホアキン兄貴が主演したことで、事故前のダメ人間・クソパートに異様な説得力が生まれ、本作に厚みを与えていると思います。


物語の前半に、ホアキン演じる主人公ジョンが事故に遭う直前の日々が割と長尺で描かれます。この時のホアキンが最高!連続飲酒のアル中を得意の瞳孔カッ開き演技でやってくれるもんだから、ジョンの救いようのないクソ人生がダイレクトに伝わってきます。アロハの着こなしが絶妙にひどくてたまりません。なんかボタンがズレてるようにも見えて、底辺感が凄まじいです。
このクズ男・ジョンは、関係性がよくわからない女が2人いる家で生活(居候か?)しているっぽく、無職っぽい。この時点でクソ感MAX。ビーチでナンパするんですが、ナンパされた女の子の表情が超ドン引きしていて爆笑でした。あんなヤバい男にナンパされたら死の危険がありますからね〜。
裕也レベルのカス人間ジョンは、それでもナオンを求めてパーティーに繰り出します。そこで同じくカス人間のキモデブ野郎・デクスターと意気投合。泥酔しながらパーティーをはしごして(しかし当然相手は見つからず)、その挙句に飲酒運転でハデに事故り、ジョンは脊髄損傷で身体が麻痺してしまった。ちなみにデクスターはかすり傷でとっとと帰るというオチまでついて、苦笑せざるを得ないです。ひどい(笑)

その後ジョンはいろいろあって断酒会に参加し、風刺漫画家として希望を見出してから潮目が変わり再生していきます。この再生パートも前半の救いようのないクズ生活が描かれることにより、「あのカス人間ジョンがここまで復活したか…」としみじみできました。
あと、自分にとって意味あるものを見つけることで、人生は展開し得るな、と改めて実感しました。風刺漫画家を志向するまでは、断酒会に参加しても、どことなく危なっかしくて、中断するのでは、とハラハラしていました。


断酒会パートもなかなか興味深かったです。意外と指示的で、ファシリテーターのドニーが参加者の語りに結構介入していた印象がありました。自由に語りっぱなしの方が良さそうに思ったのですが、意図があるんでしょうね。
赦しのワークは、絶大な効果が間違いなくありますが、ハードル高いと思いました。謝りたい人の元に謝罪しに行くのですが、相手に受け入れる準備がないと大事故になりそう。ジョンの場合は結果オーライだったけど、ヒヤヒヤしました。
それでも、セラピーの終着点が赦しであることはホドロフスキー師匠の作品を観れば明白なので、これは大きな意味のあるワークだと思います。ちょっと強引にも感じましたが、このワークこそが、ジョンの再生を決定的にしたのでしょう。赦し以後のジョンの表情は、とても穏やかに思えました。


そして、ファシリのドニーが非常に味のあるキャラでした。彼自身もアル中であり、自分もアルコールの誘惑と戦っている人です。
終盤、彼の背景が語られますが、これが胸に迫りました。大切な関係を自ら壊してしまった後悔を抱えながら、戦いに敗れそうになったときにその人を思い出して乗り切るドニーの態度には、敬意を感じざるを得ません。正直、本作で最も感動したのは、ドニーの痛みと崇高な姿勢でした。本作はドニーの物語でもあったように感じました。


演者について。ホアキン兄貴が最高すぎるのは言うまでもないですが、ドニーを演じたジョナ・ヒルがすごく良かったです。正体不明な感じもあるけど、同時に深い悲しみを感じされる存在感は素晴らしかった。
デクスターを演じたのはジャック・ブラックでしたが、あまりのキモさに、『アイ・トーニャ』に出てきた最悪デブのアイツかと思いました。
あと、ルーニー・マーラがめちゃめちゃ美しくてたまりませんでした。初めはショートでさほど印象に残らないのですが、中盤以降にブロンドのロングヘアで再登場して、これが最高にセクシー!ホアキン兄貴は公私混同しすぎな気もしますが(ルーニーと兄貴は付き合っている)、結果良ければ問題ナシでございます。
KKMX

KKMX