撮影は2017年に行われていたものの例の件によりアメリカ本国ではお蔵入り、ここ日本においてもコロナ禍で公開が大幅に遅れるとあって踏んだり蹴ったりの本作ですが、そんな禍々しさとはほぼ無縁。小気味よいピアノの音色に彩られた、とびっきりスノッブで鼻持ちならない(褒めても貶してもいません)おとぎ話でした。
それにしてもまあ、冒頭からシャラメがひたすらよく喋る。これでもかってくらい饒舌に喋る喋る喋る。アリゾナ?から生まれ故郷のNY(車で36時間かかるらしいよ!劇中では一瞬だったね!)に出てくるまでの10分足らずで、過去の主演作2本ぶん位のセリフをこなしてたんじゃなかろうかという気がしました。
展開やら演出やらオチやらはあらゆる意味で安定のウディ・アレン節なので、あらためて特筆すべきところは特になさそうです。とは言え、iPhoneの着信音がこれほどまでに似合わない映画というのもめずらしい。そこだけぽっかり「あ、現代?」って我に返っちゃう感覚がありました。まるで魔法が解けかかるみたいな。
観終えた後に残るものと言えば、でっかいI♡NYと呼ぶにふさわしい途方もないニューヨーク愛なわけで、それはそれでよござんしたねと思うんですけど、相対的にディスられ通しのアリゾナの皆さんは怒っていいやつだと思います多分。日本だったらどこらへんだろ、たぶん鳥取あたりのような気がしてならない。身ぐるみひん剥かれたエル様はつるんとした身体が相変わらずお人形みたい、いかがわしさゼロ。セレーナ・ゴメスはほっぺたプニプニで愛らしかったです。眼福。