ーcoyolyー

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬のーcoyolyーのレビュー・感想・評価

3.8
鋤田さんと鋤田さんの写真を見ると人間が好きな人だとよくわかる。私は人間があまり好きではないので羨ましい。

鋤田さんの目に惹きつけられる。
鋤田さんはいつも興味津々に世の中を見ている。何か面白いことができないかな、起きないかな、と考えて期待して見てる。
温かい人柄はよく伝わってくるんだけど、それと同時にとてもシビアな人で、自分の視界に入ってきた人が面白いか興味を惹かれるかそれとも自分の琴線に触れないかを一瞬で判断して見切ってしまう。そこでお眼鏡に適わなければ瞬時に興味を失ってしまうのもわかる。仕事だからなんとか割り切ってその中でも面白い部分を見つけ出そうとしてるけど、本当に楽しくなる人といる時と目に宿るテンション全然違う。ここに出てくる人だとポール・スミスやYMOの三人といるときは心から浮き立って楽しそうだった。

鋤田さんの目はいつもキラキラしている。ギラギラはしていない。変に理屈をこねくり回さない。良い意味で考えない。暗くない。変な野心や助平心もない。ただひたすら楽しいこと面白いことだけを追い求めている。混じり気がなく純度が高い、こう見られたいというセルフプロデュースもしない。

色んな人の部屋が映る。その人の部屋には大体写真が飾ってある。こういう写真を飾る俺、というものへの自意識が透けて見えて恥ずかしくなるような人もいた。でも鋤田さんはそういうものと無縁だ。鋤田さんにとって写真とは自分を飾り立てる手段ではなくてただただ撮るのが楽しいだけのものなのだ。

途中でミック・ロンソンの奥さんと再会した鋤田さんが彼女にフランクに「今度ミックの写真送るよ」と話しかけていた。「ビサイド・ボウイ」を観た人ならここグッとくるしかないポイントで、鋤田さんの人柄がとてもよく出ているなと思って私このドキュメンタリで一番好きなところでした。奥さんと一緒に泣きそうになった。衒いなくああ言える鋤田さん、そしてきっとその約束はなんてことないようにフットワーク軽く海を越えて果たされるのだろう。

デビッド・ボウイとの仕事が有名だけど、ミック・ロンソンともこうやって付き合えていた鋤田さん、その奥様にこうやって接することができる鋤田さん。

なんだか胸いっぱいになってしまった。

あとリリー・フランキーが同郷だと語っていたのだけど、この二人何となく身に纏ってる空気感が似てる。ああいうところからこういうカルチャーに興味を持って都会に出てくる人、通じるところがあるのかな?

共通点が同郷ということしかなさそうなのに何となく大泉洋と熊川哲也に通じるものを感じるような空気感、それが鋤田さんとリリー・フランキーの間にもあった。筑豊の中で浮いてる人の浮き方がきっと似てる。その地方から都会に出て成功する人同士は何か共通するものがきっとあるんだろうな。
ーcoyolyー

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