新潟の映画野郎らりほう

恋は雨上がりのようにの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)
4.0
【Run for the Sun】


走行中の軽自動車内で橘(小松菜奈)に想いを告げられる近藤(大泉洋)。その刹那、大型車の前照灯が目前迄急迫する--歓喜の“光明”であると同時に“命取り”ともなる事の其とない示唆。
その後の踏切警告灯の明滅と 列車通過時のけたたましい走行音も、男女の“当惑”と“胸躍らせる様”を顕してゆく-。
各場面“配光”には考え抜かれた深慮が感じられる。


開巻直後の「雲一つ無き陽光下の校庭」や「ファミレス窓から入射する眩い外光」等、其処此処で意識させられる〈sunshine〉は、陽の射す校庭こそが橘の居る場所だと呼び掛ける -“Run”こそ“Sun”であるのだと-。

そんな橘が一時の雨宿りで見つけた“もう一つの太陽”。
ファミレス事務所で、或いは図書館で、近藤が橘に対し逆光の位置となるのも、近藤がもう一つの太陽である事の示唆だ。

然し、成長を伴わぬ恋愛なぞ甘えや情欲に過ぎない。
二人は仮初めではない本当の太陽に向かって歩み出す。


川岸の堤防ですれ違う二人の行き先は別々だが、晴れ渡り 道は何処までも続いている。

ここでも大泉洋は逆光。そして小松菜奈の相貌には順光がいっぱいに降り注いでいる。




《DVD観賞》