ラウぺ

アイ・キャン・オンリー・イマジン 明日へつなぐ歌のラウぺのレビュー・感想・評価

3.8
史上最も売れたクリスチャンソング「アイキャン・オンリー・イマジン」の誕生に纏わるエピソード。
暴力的な父のおかげで母は家出、バートは父のアーサーと二人暮らしでハイスクールに通うまでに成長したが、父が若い頃アメフトの選手だったこともあって取り組んでいたアメフトは怪我で挫折、代わりにグリークラブでミュージカルの主役になるまでになる。父と反発して家を出てからロックバンドのボーカルをするようになるが、今一歩のところで世に出ることができないでいた・・・

アメリカのキリスト教徒でないとこの歌のことはピンと来ないだろうし、神を称えることの素晴らしさを歌った内容がテーマでもあるので、映画の根本のところで共感できるかどうかは、人によるかもしれませんが、普遍的な意味での感動的な物語であることは間違いありません。

最恐の父アーサーをデニス・クエイドが演じ、これがまた『ハニー・ボーイ』のシャイア・ラブーフ並みに恐ろしい。
バートも言っているようにまさにモンスター。
とはいえ、暴力的だが、家族に対する愛情は彼なりに持っていて、それを表現したり、怒りをコントロールする術を心得ていない様子。
教会に行くことも頑なに拒否し、バートとの関係も完全に修復不能と思われるまでに破綻してしまいまいます。

母が出て行った経緯や子供の頃からの虐待のおかげでバートは父をどうしても受け入れることができないのですが、そのことが彼が真のソウルミュージシャンとして脱皮できない理由となっていることが描かれます。
運命の彼女に対しても、素直に向き合うことができず、これは父譲りの特性というところを窺わせます。

アーサーはどうしてもバートと新しい関係を築きたいと思っていて、バートが家を出てからもそれなりの努力をしているのだけど、やはりなかなか上手くいかない。
バートとアーサーがヨリを戻すきっかけから歌が生まれるまでのエピソードはあまりにも美しい、教科書的な、絵に描いたような感動物語なのですが、いささいか出来過ぎなどと思わずに、親子の和解と信仰の復活に至る奇跡を素直に見届けるのが正しい鑑賞法といえるでしょう。
感動ポルノだとか、宗教的美化などと思わない程度には、私もピュアな心で良い話としてこの物語を見届けることができました。
苦虫を嚙み潰したようなオヤジの顔に浮かぶ満面の笑みを見ると、『ライトスタッフ』でのゴードン・クーパーの若かりし頃とまったく同じ人物が、確かにスクリーンの向こうに存在していたのでした。
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