かつきよ

プーと大人になった僕のかつきよのレビュー・感想・評価

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
3.7
癒されたくて鑑賞〜
キャラクターの実写化作品系はピーターラビット、パディントンと見てきましたが、こちらの作品はまた毛色が全く違ってよかったです。
まんまですが、疲れて行き詰まった社会人をターゲットした映画。でも刺さるか刺さらないかは微妙なところ、、、
本当に追い詰められた人は、この映画が救いになるのか?

とりあえず、エンタメ色はもちろんゼロではありませんが、家族映画や子供向け、低年齢年層向けというより、がっつりターゲットは大人向け作品。子供はもしかしたら退屈かもしれないと思うレベル。哲学的な感じもある。

かと言って、完全にプーさんのブランドや世界観を壊してアダルト向けにするのではなく、プーさんのファンシーでゆるくてマイペースで本質的な価値観をぶっこんでくる世界観をベースにして、より現実寄りに雰囲気を移行して作られているところは非常に面白かったし、仕上がりの温度としては良かったなーと思いました。キャラビジュアル、めっちゃリアルで本当にいそうなのに、ちゃんとファンタジーで夢はあるし、ぷーさんぷーさんしてる。

、、、とか言って、実はくまのぷーさんって、キングダムハーツくらいでしか知らないけど、歴代ファン的にはストーリーは、納得いくものなのかなぁというのは、気になるところ。
にわかプーさニストからすると、予想以上に面白い作品に仕上がっていてとてもよかったのですが、、、。いろいろ調べて見たりもしましたが、
良いなと思ったところをまずは。


◾️ビジュアルが可愛い!

熊をモチーフにしたキャラクターってめっちゃくちゃ好きなのですが、昔からぷーさんは熊としては魅力を感じなかった!
ぷーさんとして好きって感じ。そう、もちろんすごくプーさん好きなんだけども、クマとしては見られない感じがするし、たまに、なんかおっさんぽいなって思うこともあったり、、、
でも、今回のくたくたのぷーさんはマジでツボ。
一瞬見ただけじゃぷーさんってわからないくらい熊のぬいぐるみに寄せられてる。ついでに言えば100回洗濯されたみたいなくたびれ方が本当にやばい。かわいい。
劇中でも、手のつけられない子供みたいな感じで家の中汚したりマイペースすぎてはらはらさせられたりするけど、その全部が愛おしくなって許せちゃうくらいかわいい!

でも、もっと可愛いのはティガー!!!
おま!!!どうした!?
5000回洗濯されたんか!?大丈夫か!?ってくらいくたくたで色が落ちてる。老けた??おじいちゃん??って感じ。
愛おしすぎる。前から好きだけど、なんかちょっとだけ、自信過剰でやかましいなって思ったりもしてたんだけど、なんかこの草臥れた感じでそれをやられると、逆に愛おしい、、、
もともとみんなこんな目でティガーのこと見てたのかな、、、。どんだけお調子ものでも、抱きしめたくなるくらいかわいい。
ぁぉぁぁあぁぁぁああいくるしい

そんな感じ。もちろん他のキャラもで最高にかわいいです。
イーヨーとか、実は画鋲で刺すのとかちょっと痛そうで苦手だったり、ネガティブな感じが曲者だなって思ってたりもしたんですけど、そういう、ちょっとした違和感みたいなのが全部愛おしくて好転する、ちょっと退廃的な100エーカー。
アニメとかゲームの明るくてパッキリしている世界観よりも個人的にはこっちの方が受け入れやすかったです。

この愛おしいキャラクターたちを見られただけで価値があるなって思いました。


◾️ストーリーがわかりやすい

この話オチどうなるんだろう、、、ゆるい感じで終わるのかなって思ったけど、ちょっと捻りもある感じで、勢いもあって、面白さもあって、安心して見られてめちゃくちゃスッキリするラスト。途中までは不穏な感じとか先が見えない感じもあるけど、めちゃくちゃ綺麗に風呂敷畳まれるので、見たあと後味がいい!
雰囲気は大人向けだけど、ストーリーは小難しくないので子供が見ても大丈夫!


◾️声優さんがいい

言語版で見るのが好きって人もわかりますが、ぷーさんは日本語版もめちゃくちゃ利点があるな!と思ったのは、やっぱりぷーさんって日本にも浸透してて、日本語の声で慣れ親しんできたから。
ディズニーのライドの声も日本人声優さんだし、ティガーのウフフフフー!って感じとか、ピグレットとかラビットとか、いろんなキャラも、みんな、あーーこの声!これ!落ち着くーって感じで、ちゃんと他メディアと同じ声優さんを使ってくれてるのがよかったです。

あとは、堺雅人!!最近半沢直樹見たり、プロメア見たりしてたし、そんなに大きく印象が変わることもなく、堺雅人って安定して堺雅人の良さがあるなーと思ってたのですが、クリストファーの堺雅人は個人的には初めて聞く感じもあって、非常によかったです。堺雅人の新たな魅力発見。
最初、あうのかなー?って心配してたんですが、、、堺雅人って本当に演技いいですね。めちゃくちゃ今作でのクリストファーの雰囲気にぴったりな演技をされていたと思います。


 
◾️演出がエモい

(こちら微ネタバレ入ります)

ネタバレ有りなのでスクロールで




















一番好きなのは、プーと初めて再開するシーン。
プーさんは一発で、当たり前のように大人になったクリストファーをクリストファーだと認識するのでちょっとびっくりしたのですが
あー、プーの世界の住人は、ちゃんと彼を認識できるものなんだ!そう言う生き物とか世界法則なのだ!と勝手に納得しました

でも、後半で他のメンバーと合流した時、誰一人としてクリストファーのことを彼と認識できないんですよね
結構ショックなシーンなんですが、
ここで改めて思ったのは、え、プーさん!?ってこと。
このタイミングで、実はクリストファーの本質を見抜いて見分ける超絶技巧を発揮していたのはプーさんだけだったと言う事実に気付かされ、え、プーさんエモ!!!ってなりました
プーさん!?え!?プーさんクリストファーの魂の友だちやん!!って感じ

そんなプーさんのことを拒絶というか、厄介扱いしてしまいすれ違ってしまったクリストファーの現状を考えると、、、胸が苦しい。。。ってなる。

ぷー、尊すぎるよ!!くぅーーー
二人の関係性エモーショナルおばけ


◾️名言が多い

哲学的で本質的なものに触れるストーリーラインもあいまって、プーの不用意で損得勘定のない正直で素直な一言はかなり胸に刺さるものが多い!核心をついてる!って思わせるセリフがまあ多いこと
全部とは言わなくても、必ず一つは胸に響くセリフがあるはずです。

私が一番好きなのは、
「僕は迷子だ」っていうクリストファーのセリフ(行き先不明で、未来が見えない、漠然とした不安を抱いてる、疲弊しきってる、人生の道標が見えない、そんな社会人を象徴するセリフですよね)に対する「でも、僕が見つけたでしょ」っていうセリフ。
これ見る人が見たら爆泣するんじゃ。
わしらもプーさんに見つけて欲しい。ってなっちゃうのでは?

物語として見た時、クリストファーは救われて、大切なことを思い出して、いいなー大団円。幸せになるんじゃぞってなれたけど、、、
例えば自分がこれで救われるかっていうところで、プーさんで救われるからみんな見て!!って言えないなって思ったのは実はここら辺。

物語としてはおすすめですが、まじで追い詰められてる人は、「でも俺にはプーさんはいない、、、俺は誰にも見つけてもらえない、、、プーさんきて、、、」ってなって泣きながら落ち込むのでは?とか思ってしまいました
それはネガティブすぎですかね笑


◾️プーさんの正史として

一番気になったのはここ!!
調べちゃいました!
プーさんってすげー有名だし、歴史あるし、メディア露出もめっちゃあるから、たくさーーーん作品があゆように思えたけど、ディズニーブランドのストーリー正史として見た時に、ディズニー長編一作目の77年版プーさんがまず基盤にあって、この作品でクリストファーとの交流から別れまでが描かれている(らしい)のです。
くまのぷーさん自体はわりの77年版で完結していて、それ以降の作品は、時間軸的な続編、ではなく、離別前の世界線での描かれなかった出来事の一つ、という形だったりでスピンオフ的な立ち位置なのかな?

それが今作では、77年版のラスト(決別)の続きがはっきりと描かれており、冒頭で描かれるシークエンスは77年版のラストそのものみたいです。
それをディズニーブランドでやってるわけだから、スピンオフ作品というにはあまりにも正史っぽすぎる。
恥ずかしながら、ズオウとかヒイタチっていう概念も知らなかったのですが、ここらへんもがっつり77年版からの流れらしい。77年版は予備知識としてチェックしておくべきだったかなぁ。

ここからが、まあ、難しいところなんですが。
今作は、スピンオフとして、割り切ってみれば問題ないと思うのですが。
しかし、うーん、私は77年版も原作も未読なのですが、つまりくまのぷーさんって、元々は少年期のぬいぐるみ遊びの世界をはちゃめちゃに描いた作品みたいで
子供のあるあるな空想とかイマジナリーフレンドとか、そういうのをファンタジー調に落とし込んだ作品らしいのです。クリストファーと100エーカーの森との決別は、クリストファーの心の成長や、何もしないということ、ぬいぐるみたちに投影してた自身を、捨てるわけではなく、忘れるわけではないけど、一つ区切りをつけてそこに置いていくという、ジュブナイルとのある種の決別を演出していた物語であると、、、

くまのぷーさん自体がクリストファーありきの作品なんだなぁというのが、今回学んだこと
どっちかっていうと、ファンタジーの世界に人間が迷い込んだ、クリストファーはサブキャラくらいに思ってましたから

実際、プーさんとか100エーカーの世界観、キャラクター感ばかりがフィーチャーされて、その子供向けアニメ作品的な側面のイメージが一人歩きしている気がする。
少なくとも、そうじゃなかったとしたら、今作でのクリストファーと100エーカーズの交流はもっと閉鎖的で彼だけのものとして演出されたはずで、実際にキャラクターたちが現実世界に飛び出してきたり、飛び出してきたとしても他の人に見えたり、家族とかと交流したりはしなかったはず。
それした時点で初期コンセプトの、クリストファーの内面世界をファンタジーに落とし込んだって部分が破綻しますよねー。
根幹がファンタジー世界の作品になっちゃうわけで

私なんかはこれはこれで有りだなーって思えましたが、プーさんのここら辺を理解してここら辺のバランスを大切にぷーさんを愛してるファンの方からしたら、うん?と首を傾げる作品でもあったのかなとは思います。

そうでなくとも、クリストファーのその後、とかを描かなかったからこそ、そこで完成されていた作品でもあり、その後を描くこと自体野暮っていったらそこまでなんですが、、、

メタ的にいうと、プーさんの続編的な時間軸ではあるけど、プーさんの続編が作りたかったわけじゃなくて、おとな向けのプーさんを作ろうとしたらこういう設定になった、、、という感じだと思うので、
スピンオフのひとつとして捉えられたら、それが一番なのかなと思います

とにかく見てよかった。おもしろ作品でした!
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