カツマ

スパイダーマン:スパイダーバースのカツマのレビュー・感想・評価

4.9
もし映画館に他に誰もいなかったなら、きっと立ち上がって感嘆の叫び声をあげるに違いない!そして最高のサウンドトラックに乗せて、ステップを踏みながら観たこともない映像体験を体感したいと思うはずだ。スクリーンの中ではコミックが躍動し、その振動と興奮が目の前で激しくスパークする!これを完璧と言わずして何と言うのか、今すぐにでももう一度見返したい。この映画が公開している次元に住んでいることを幸運に思えた2時間だった・,!

この映画の告知をはじめて見たのは昨年の『ヴェノム』のエンドロール後のおまけ映像だった。その後、ミッドタウン日比谷でも巨大スクリーンで放映され、力の入り方が尋常ではないのは察せられたが、、。こうして拝んだ後には告知段階では少しもこの映画の魅力を伝え切れていなかったことが分かる。これは絶対に劇場で見なくてはダメな作品。Netflixのように配信で見る時代は到来しているが、圧倒的なものはやはり劇場で体感してこその感動を味わうことができる。

〜あらすじ〜

ブルックリンに住むマイルス・モラレスは、頭脳明晰で優秀な高校生。エリート学校に編入し、両親からの期待も大きかったが、それは彼にとっては息の詰まるものだった。
そんなマイルスの息抜きは親しくしている叔父のアーロンに会いに行くこと。その日も気落ちするマイルスは、アーロンと共に地下鉄の高架下の秘密のエリアで発散するように壁にグラフィティを描きまくった。その最中、マイルスは手元を奇妙な色の蜘蛛に噛まれ、これがもとでスパイダーマンの能力を得ることになる。
すぐに身体にも異変が起こり、マイルスは翌日の夜もアーロンに連絡を取るも、頼りの叔父は捕まらない。そこで昨夜訪れた高架下に行ってみると、そこでは謎の実験が行われており、目の前ではスパイダーマンとグリーンゴブリンの激闘が繰り広げられていた・・!

〜見どころと感想〜

この作品は全く新しい手法で作成されており、そのプロセスと技術は特許申請までされているそう。正にアニメーション界に革命を起こしてしまった作品なのだと思う。仕上げを手書きで施しているというのを聞いて気が遠くなってしまうが、その甲斐あって映像が生きているかのようにダイナミックな躍動感で次から次へと溢れ出す、驚異の映像体験が我々鑑賞者を眼福の境地へと連れ去って行くのだ。

そして、別次元のスパイダーマンが集結し、共闘して悪の組織と闘う、という軸になる物語と、まだまだスパイダーマンになりたての未熟なマイルスの成長物語、というもう一つの軸の両輪を見事にバランスよく融合させた脚本も見事。抜群のスピード感を漲らせながらも、スパイダーマンそのものの魅力は培養され解き放たれる大団円はもう最高以外の言葉が無く、全てのシーンが狂おしいほど愛おしくなってしまった。

観る前は何故スパイダーマンをまたアニメで?とは思ったけれど、この映像革命の第一作に相応しいのはやはりスパイダーマンだったのだと、今なら強く思える。マイルスの部屋の壁に貼られていたチャンス・ザ・ラッパーのように、この映画もまた何かをぶち破ろうとするパワーを持っていた。そしてそのエネルギーは我々鑑賞者へと伝染していくことだろう!あぁ、エンドロールの後、すぐにもう一度観たくなってしまった。そう再び、あの次元の中へと・・!

〜あとがき〜

前評判は聞いていたのですが、実際に見ても今年の年間ベストムービーの一角に名乗りをあげるほど素晴らしかったです。ここまでの完成度のアニメーション作品が生まれたことは、間違いなく今後のアニメ映画のクオリティを引き上げると思うし、音楽や脚本まで練り上げられたことで一つの金字塔を打ち立ててしまったような気がします。

果たして続編はあるのでしょうか?見てみたい気もするけれど、制作側の大変さが分かるだけに、あまり欲を出してはいけないかな、という気も。もちろん本音を言えば、この先を見たくて見たくて仕方ないのですが(笑)
カツマ

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