ゼロ

スパイダーマン:スパイダーバースのゼロのレビュー・感想・評価

4.8
全てのアニメーションを過去のものにする作品。

マーベル・コミックの漫画を原作とする『スパイダーマン』のアニメ作品。スパイダーマンと言えば、実写のイメージが強いですが、本作品は実写をリスペクトしながら、アニメーションでしか表現できない映像作りに挑戦しています。

物語としては、高校生のマイルス・モラレスが、突然変異したクモに噛まれ、特殊な能力を得る。ある日、スパイダーマン(ピーター・パーカー)との戦いの場に出くわし、小型のメモリースティックを託された。スパイダーマンは、キングピンによって殺害され、ニュースとなっていた…。

序盤で、主人公以外のスパイダーマンが現れ、殺害されたというので驚きましたが、驚きは続きました。アベンジャーズならぬ、スパイダーマン達が終結します。異次元のスパイダーマン達なので、絵柄が違いますが、それぞれスパイダーマンならではの過去を背負っています。キャッチコピーの「運命を受け入れろ」は、どのヒーロー達も、運命を受け入れた上での、現在があります。

展開としてのインパクトもありますが、映像としての作り込みも侮れません。3DCGだけではなく、コミックをそのまま映像化したような2Dもあり、アニメーションの全てを作品に注がれています。分かりやすいのは「線画、絵画、ドット、その他あらゆるコミックのテクニック」です。この分野は、日本が得意なのかな…と思っていましたが、海外はやらなかっただけで容易にできるもんなんだ、と実感しました。

設定は良く、映像も良く、では、実際の物語としてはどうか?と訊かれれば、少年の成長物語として完璧でした。亡きスパイダーマンだけではなく、多様なスパイダーマンと出会い、運命のいたずらと別れを経験し、最後に大人へと近づいていきます。ある意味、お約束ではありますが、茶化すことなく全力で描き、心を震わせています。

最終対決の映像は、アドレナリンが出るような観ていて気持ちが良いものでした。映像だけではなく、音楽や構成、色使いを含めて、一流のものが揃っていました。

何よりスパイダーマンが知らない人が観ても楽しめますが、知っている人が観た方が何倍も楽しめる作品となっているのが憎いです。

誰もが楽しめる作品であり、もう一度見返したくなるようなエキサイティングな作品でした。
ゼロ

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