マヒロ

万引き家族のマヒロのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
狭いぼろ家に5人で住む柴田一家は、祖母・初枝(樹木希林)の年金や母・信代(安藤サクラ)や父・治(リリー・フランキー)の給料の他、治と息子の祥太(城桧吏)が協力して行う万引きで生計を立てていた。ある日の帰り道、治は寒い冬の夜にも関わらずマンションの廊下に放置され凍えている女の子を見つけ、可哀想に思った彼は家に連れ帰ってしまう……というお話。

法による保護からあぶれてしまった人たちが、細々と、それでいて幸せに暮らしながらも犯罪に手を染めないと生きていけないという厳しい現実を描いている。「万引きを肯定している」みたいな意見もあったが、決して犯罪が正しいものとして描いてはいなくて、主に祥太の目線からその危うさを描いていて、必ずしも家族が正義であると言う一方的な視点にはなっていないのが良かった。

これは是枝監督の他の作品にも言えるが、俳優達の自然な演技の切り取り方はドキュメンタリータッチでありながら、あくまで映像はしっかりと映画であるというところが魅力的で、リアルに描こうとして手持ちカメラで映像がブレブレ、みたいなよくありがちなやり方はせず、ごちゃごちゃとしたボロ屋で暮らす家族の様子を端正な画面作りで切り取っているのが良かった。

「家族」という集合体を結びつける最も強い要因はやはり「血縁」になるんだろうけど、だからといって必ずしもお互いに愛しあうことが出来るわけではなくて、むしろそれが呪いのような枷になって苦しめられている人もいる…というテーマは、例えば遠く離れたレバノンの映画である『存在のない子供たち』でもそうだし、なんだったら『ガーディアンズオブギャラクシー2』とかでも描かれていた普遍的なものだったりする。それが当たり前だからという理由でその人を「家族」という枠組みに縛り付けてしまうことの恐ろしさを描写しつつ、その先については観客に委ねるバランス感覚が良い一作だった。

(2021.141)
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