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万引き家族のFilm日記係のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.8
公開3日目に鑑賞したのだが、映画が終わってからすぐに席を立つことが出来なかった。言葉では表せない虚無感に包まれて、ただ呆然とするしかなかった。家に帰ってからもなかなか整理してレビュー出来そうになかったので、1週間後にもう1度鑑賞し、更に色々な人のレビューや解説などを一読して、このレビューに臨んでいるので、一部他者の言い分を引用している部分が多々あるが、自身もその見解に共感しているということで了承していただきたい。

【ざっくりとしたレビュー】
映画全体の感想としては本当に素晴らしかったの一言に尽きる。

血のつながりはないものの、万引きによって繋がっている家族の絆の形を描いていた。一見非現実的な家族を描いているようだが、物語の中には虐待やDV、夫婦間の問題など、現代の社会に潜むあらゆる問題を、是枝監督ならではの切り口で風刺しており、何とも言えない現実感をもたらしていた。

ストーリーについては、大きな展開の動きが中盤までほとんどないものであったが、それでも全く飽きさせず、徐々にその世界観に吸い込まれていくような面白さを持っていた。
家族の幸せな様子を見せるシーンでは観ているこちらの心もほのぼのとするような温かさを帯びていたし、意外にも笑える要素が結構ちりばめられていて、二面的な面白さがあった。

この物語は何といってもキャラクターの映し方が素晴らしかった。キャラクターの数自体は少ないのだが、一家全員の人物像を上手く掘り下げられていた。それぞれ違った思いの丈を抱えており、それが終盤の事件に重みを与えられていた。
演じた役者も全員演技は素晴らしかった。特に子役の2人は目力もあり、驚くほど上手く演じられていた。聞くところによると、子役の2人には台本を渡さず、現場でセリフ等を監督が教えていたようだが、それもあってか棒読み感があまりなく物語から気持ちが離れることもなかった。
あと余談だが、駄菓子屋の店主役を演じた柄本明が、映っている時間はごくわずかながらも、存在感が際立っていて良かった。

この映画は映像面でも凄さがあった。
まず何より凄いと思ったのは、家族の暮らす家の中の映し方である。家族の暮らす家は6人が暮らす家としてはとにかく狭い。布団はギリギリ3,4人分敷けるぐらいで、食事にときには部屋の中を動くのも大変なくらいなのだ。それでも、家の中の場面のカメラワークがとても多様で工夫されていた。例えば、祥太の寝床の押し入れからリビングを映すシーンや家の上から映したシーンなど、あたかも観ている自分も家の中に居るかのような親近感がそそられた。
また、部屋の内と外、陰と陽を意識した場面切り替えがよく見られ、それが上手く人物の心情や状況を間接的に描写されていた。陰と陽の切り替えについては、ロングパーンや引きの画を有効的に用いて行っている部分もあり、良い臨場感が出ていた。
またキャラクターの心情を言葉でなく表情や目力で訴えるカットが多かったので、余計こちらの胸に来るものがあったし、より印象的なものに仕上げられていた。

この映画では登場人物が食事をしながら会話する場面が何度もあった。食べている物は質素なもので、食べ方も決してきれいなものでなかったが、逆にそれによってどこにでもあるような家庭感が出されていて、とても身近なものに感じた。また、ストーリーが展開していくに連れて、食べる物や食べる場所が変わっており、食事を通じて家族全体の心情や状況を暗示する役割があったように思った。

音楽も少ないながら場面にマッチしたものがほとんどで、場面や映像に奥深さが出ていた。

【注意】
(ここから下はネタバレ以外の何ものでもありません)

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面白さ:1.0 脚本:1.0 人物・演技:1.0
映像:1.0 音楽:0.8
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