万引や盗みを「家計の一部」にしている5人家族
彼らは誰一人血のつながっていない「家族」だった
ある日家を締め出されている少女を拾い
6人「家族」として暮らし始めるが―
ワイルドスピード的な映画を「動」の極みの映画だとすれば
万引き家族は「静」の極みのような映画で
淡々としたシーンの積み重ねなのに、全く退屈することがない
パッと見では知覚できないくらい、こだわり、贅沢に作られたシーンばからなのだと思う
何が起こってしまうのだろう!?というワクワク感というよりも、
まるでドキュメンタリーのように「奇妙な家族の日々」を覗いているような、怪しい楽しさがずっとある
色々な事情を抱え、血は繋がっていないけれど、ものすごく危ういバランスの上で成り立っているだけだけど、家族ごっこだけど、一緒に暮らしている6人の、一瞬だけど楽しい日々
それはまあ当然のように崩壊さざるを得ないんだけど
そのやるせなさにどうしても色々と考えてしまう
今の行政や福祉がカバーできる範囲の限界や
家族は何をもってして「家族」足り得るのか
とか何とか
ただ行政への一方的な批判を描いているワケでもなく
育てる側―虐待や育児放棄をしていた「生みの親」とはまた違った形で
「育ての親」である主人公家族も歪んでいるのだ
そう生きるしかなかったのか、愚かなだけなのか
やっぱりつくづくやるせない
そしてこの映画の本当に凄いところは
ハッピーエンドかバッドエンドかで語れない
それらを超えた、ハッピーエンドの(あるいはバッドエンドの)向こう側にエンディングを持っていったところで
これで良かったとも、
これで良かったのか…?
と悩んで、だから結局「仕方ないこと」に着地しているところだ
そんなもう現実でしかない感覚を映画で描くかね!!!??
凡百な映画ならもっと手前にエンディングを持ってきてしまう
是枝監督の手腕こわ
結論として
安藤サクラさんのゾッとするほど一瞬で変わる表情や
演技の凄さと
ものすごく生々しい色気に
やられてしまいました……