エソラゴト

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語のエソラゴトのレビュー・感想・評価

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『24アワー・パーティ・ピープル』
『コントロール』
『ジョイ・ディヴィジョン(ドキュメンタリー)』

…そして今作

物語の舞台は英国北西部の工業都市、マンチェスター。ニューヨークのマンハッタンやロンドン、パリ等の大都市ならいざ知らず、一介の地方都市であるその地を舞台とし音楽と密接に関係した映画がこんなにも作られる街は他に類を見ません。

そんな街で生まれ育った"心に茨を持った青年"スティーブン・パトリック・モリッシーのザ・スミス結成以前の姿を描いた正に「はじまりの物語」…まるでこの地の曇りがかった灰色の空模様のような鬱積した人生を描いています。

強烈な皮肉屋で捻くれ者である彼は当然周りとの軋轢も生まれ孤独な日々を過ごしています。それでも自分が唯一情熱を傾けられる物=音楽とそれに理解を示してくれる友人や母の存在は彼にとってもかけがえのないものだったに違いありません。

そんなストーリー展開は今年初めに鑑賞した年代は違えど同じ英国北部の地方都市を舞台にした音楽×青春を瑞々しく描いた『ノーザン・ソウル』にも通ずる作品でした。

いつも受け身で自分から行動する事に臆病であった彼が、その殻を破って今後の人生を左右する唯一無二の人物に会う為に自ら出向きドアをノックするシーンは感涙ものでした。


追記: 『24アワー・パーティ・ピープル』 でも描写のあった1976年6月4日にマンチェスターのLesser Free Trade Hallで行われた観客僅か42人(モリッシーは勿論、その後のマンチェスタームーブメントを支える人物達)だったというセックス・ピストルズの伝説的ギグの様子は今作でも描かれています。