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王の預言書のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

王の預言書(2018年製作の映画)
3.7
韓国の古典「フンブ伝」は、善良な弟と強欲な兄の勧善懲悪モノで、韓国では誰もが知ってる日本でいうところの「舌切り雀」のような話だそうです。
本作は、そのフンブ伝を現代にも通じるような新解釈で描いた時代劇です。

主人公の官能小説で人気が出た作家フンブが、子どもの頃に争乱で行き別れた兄を探すうち、その消息を知っている両班(官職の貴族)でありながら貧しい民を助けているヒョクと出会い、ヒョクの実の兄でありながらヒョクとは対称的に強欲で非道な野心家のハンニとの関係から、彼らをモデルにして書いた「フンブ伝」が民衆に広く広まり、やがて時代を変える力になっていくという、「ペンは剣よりも強し」的な話です。

村の子どもたちに教育を授け、農地を耕し、貧しい人たちと共に生きるヒョクの生き様に触れ、小説を書くという自分ならではの力を発揮し、周りの言いなりにしかなれない未熟な王に、政治は誰のためにあるのかという原点を突きつける、そのやり方が面白いんですよね。
「国の主人公は民衆だ」なんて主権在民を説くセリフはまさに現代的ですが、民衆を置き去りにし、血生臭い権力闘争に明け暮れる大臣達ではなく、殺し合わずに文章で世の中を変えようとしたフンブと民衆の姿は、ろうそく革命で腐敗した大統領を権力の座から引き摺り下ろした韓国の歩みとも重なりました。

フンブを演じたチョンウも良かったですが、この作品が遺作になったジュヒョクさんがまたね、高潔なヒョクを見事に演じていて素晴らしかったです。
また、男装してまで作家を夢見るフンブの弟子を演じたチョンウヒがチャーミングなんですよね。
そんなに出番が多いわけではないけど、しっかりとした存在感があります。
最後にあの人のカメオ出演もあり、あっ♡と嬉しいサプライズもあるので最後まで消さずに見て下さい!

この作品の前に「毒戦 Believer」でイカれた演技を見せたジュヒョクさんの振り幅がすごく、あらためて素晴らしい役者さんだったんだと思いました。
最後の追悼文にこみ上げてくるものがありました。

47
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