小松屋たから

カツベン!の小松屋たからのレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
3.6
適当につぎはぎした映像に好き勝手に「説明」をつけただけでも観客は盛り上がることができる。映画って、そもそも「見世物」「余興」なんだ、だからあんまりかっこつけないで自由に観ようよ、楽しもうよ、という、映画鑑賞の原点回帰を訴える内容には大いに頷けるところがあった。

もちろん、劇場でうるさい人がいたら嫌だし、携帯を鳴らされても腹が立つけれど(笑)、最近盛んな「応援上映」「声出しOK」などは、本来は、それが映画鑑賞の自然な形で、本能的に映画館にもっと自由を求めているお客さんが増えているということなのかもしれない。だから、きっとこの映画の上映開始前に、定番の「劇場マナー」の映像を流すのは監督にとっては、本意じゃないかも。

でも、本作の全体のテンポは、今の時代のお客さんには受けないんじゃないかとも思った。

子供時代の描写の冗長さ、くどさで、まずは、多くの人が集中力を失ってしまうんじゃないだろうか。そして、最後のドタバタの追跡劇も、昔のサイレントフィルムのオマージュとして作られているのだろうが、やはり、現代視点では、ぎこちない下手なアクションに見えかねない。

ただ、「映画愛」は凄く伝わってきたし、この時代に行って映画を観たい、映画界を覗いてみたいという気持ちにはさせてくれた。だからうまく言えないのだけれど、自分の観終わり感は、よく比較されている「ニューシネマパラダイス」よりは、「ワンス・アポン・ア・タイム・インハリウッド」に近かった。

で、ふと、思いついたのは、この映画そのものに「弁士」をつければいいんじゃいないかと(笑)。「弁士」とは一体何者なのか??、主役とヒロインの恋の行方は??、追いつ追われつの駆けっこの顛末は?? 主人公は捕まってしまうのか、はたまた、逃げ切れるのか?など、上映中に誰か上手な人が煽りに煽った口調で折々語ってくれたら、きっと、緊迫感やドキドキ感が増してもっとお客さんが入る映画になるんじゃないかと。無茶な感想でした。