来る来る来る来る来る来る来る来る！
と劇中で何度も行っていましたが、僕のところへは何も来ませんでした。恐怖や面白味はもちろん、波風ひとつも立たず物語は終わってしまいました。
僕は中島哲也監督の「告白」が大好きで、あの作品のような面白さを期待してたんです。
「告白」は物語の構成力が秀逸で、事件の視点と時系列を絶妙にずらすことで、登場人物たちの内面が浮かび上がり、事件の真相が明らかになって行きました。
しかし今作に関してはその構成力が全然良くありません。
冒頭から妻夫木聡さん演じる田原のパートがとても退屈でやたらと長い。物語の導入として、惹きつけられる要素は一つもなく、ただ田原のダメ亭主というキャラを作るのに、やたら時間を割いていました。
それに引き換え、この物語の主人公とされている岡田准一さん演じる野崎のキャラの薄さ。登場するタイミングも遅く、観ていて感情を寄せるには役不足で、もう少し具体的に野崎のキャラや視点を粒立てないと、上手く物語が回らないと思うのです。久しぶりに岡田准一さんの侍や軍人以外の役を拝見できたのに、この役ではもったい気がします。
クライマックスに差し掛かり、松たか子さん演じる琴子パートの対決シーンは少し期待をしたのですが、やはり最後はハッキリしないまま終了。
この作品が、アニメの「化物語」のように、化け物が人間の弱さに巣食う物語だと言うのなら、もう少し具体的に化け物の正体や、人に取り憑くルールや定義を示して欲しかったと思います。
この作品で唯一素晴らしかったのは柴田理恵さんの存在。柴田さん用にあつらえたようなピッタリな適役を見事最後まで演じられていました。
