馮美梅

芳華-Youth-の馮美梅のレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
4.5
2時間越えという作品でしたが全くだらけるシーンはありませんでした。
一言で言えばもう1つの「さらばわが愛覇王別姫」だと思った。
物語は人民解放軍の士気を高めるために結成されている文芸工作団にやってきた何小萍と知り合いだった劉峰、その2人の事を語るのは同じ団員仲間の穂子。

自分の事より、常に団員のためにあれこれ尽力し、周囲から模範生と言われている劉峰。複雑な生い立ちで家族と離れたくて文工団にやってきた小萍だけど、あることで仲間から虐められることになる。希望が一瞬のうちに打ち砕かれた。

血気盛んな男女が同じ建物で生活していくのは大変そうです。
でも、この時代、徐々に文革初期とは違い随分と緩い感じになってる?
誰よりも練習する小萍。夜だから練習後シャワーを浴びることなんてできないのでどうしても翌日の練習は汗臭くなると、それでまた男子団員からもからかわれてしまう。それだけ誰よりも必死で練習してるだけなのに…

劉峰も腰を痛めてしまい、踊りが出来なくなり、美術班でいろんなものの修理を担当しているそんな時、陳燦がテレサテンのテープを持ってきた。それを聞いた劉峰は、以前から好意を持っていた丁丁に告白をするんだけれどそれがまた大きな事態に発展し、劉峰は配置転換することに。

あれほどみんなが頼りにして模範生と言われた劉峰なのに、丁丁はだから自分にそんなことを言ったりするなんて思ってもみなかったと、そんなことで厳しい部隊に移動する劉峰に小萍は自分の思いを伝えることが出来なかった。と同時に完全に工作団にいるモチベーションが無くなってしまい、劉峰に再会できるかもしれない中越戦争真っただ中の野戦病院で看護婦としての任務に就くけれど、それはそれで過酷な現実を見せられる。

戦闘シーンはかなり臨場感があり、観てて怖かったと思うほど迫力ありました。最近日本映画は広い年代の人たちに診てもらおうとして、思い切ったシーンを見ることができない作品も多いけれど、練習や慰問で音楽を奏で、踊るシーンも、戦闘シーンも素晴らしかった。だから見てて余計ベトナム兵はこの時のゲリラ的戦法は凄かったんだなと改めて思ったりしたし、劉峰も自らも負傷しながらも任務を遂行し、腕をなくしてしまう。

そして小萍もいろんな兵士たちの治療を通して精神を病んでしまう。
病んだ小萍は劉峰が会いに来ても誰だかわからないくらいひどい状態になっていました。

時代は流れていくもので、文化大革命も終焉を迎え、文工団も解散を迎える。狭い世界に生きていた仲間たち。穂子が好きだった陳燦は淑雯と付き合ってるという事実を知らされ、丁丁は香港に住んでいる人と見合いで結婚するという。

一人残った穂子の元に片腕を失くした劉峰がやってきた。そしてそこで見つけた物は小萍が破った自分の写真だった。

時間の流れとともに、文工団での日々も中越戦争の事も記憶の中から薄れていくとともに理不尽で残酷でもある。

ただ、最後、一度は心が壊れた小萍が治っていたこと、そして自分の思いを劉峰に伝えられたこと。ようやく2人に心の平和がやってきたこと。

思えば文工団が解散したのは1980年。私が初めて中国に行ったのは1986年、たった6年前の出来事。それから30年…中国は本当に目まぐるしく変化していったし、小萍にしても自分とさほど年齢が離れているわけでもないだけに、遠い昔の話ではないんだということを改めて実感した。

文化大革命は一体何だったんだろう?とはいっても今現在も中国は共産党に支配されているわけで、近代化した社会と共産主義の矛盾を抱えながら今も当時青春を過ごした人たちは生きているんだなぁ~。

今回も劉峰を演じた黄軒の演技は素晴らしかった。
中国の俳優さんたちは基本的に演技の教育などを受けているので、踊りや音楽のシーンはお見事でした。

エンディングは韓紅が歌っていたんですねぇ~。
見た目と声のギャップは相変わらずですけど、美しい声でした。
馮美梅

馮美梅