サラリーマン岡崎

ここは退屈迎えに来てのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

ここは退屈迎えに来て(2018年製作の映画)
4.9
ロードムービー版『桐島、部活やめるってよ』。
どこにもいるクラスのヒエラルキー上位のイケメンムードメーカー椎名を中心に見えてくる周囲の人格。

語ることは「青春が終わった後の喪失感」という普遍的なものではあるが、
この映画が面白いのはそれを会話劇で終始行う点である。
正直物語はそこまでない。だが、登場人物たちの会話が長回しで繰り広げられる。
東京はいいよねとか、結婚するしないとか、クラスの話とか、進路の話とか、それはもうたわいの無いことであるが、
常にその会話の中で様々な立場や意見の人がいるため、見ているこっちはどちらの意見に共感するのかを問われる。
そのため、長くても全く飽きず、むしろスリリングだ。
(廣木隆一監督の出てくる登場人物は本当にナチュラルに会話するので、本当にすごい…)

そして、展開もそれぞれの会話が違う年代で展開していき、
徐々に登場人物たちの関係性が浮き彫りになるところもなかなかスリリング。

明るくキラキラした椎名。
彼に好かれたくみんなが彼を追う。
彼はその彼の基準に合いそうな人と付き合いがちになるが、
結局彼が自ずと選ぶのはそれとは全く違った側の人たちというのが面白い。
特に、渡辺大知の下りはとてつもなく喜ばしい展開になるが、渡辺自身の抱える思いはそれとは違うものになっているのがなんとも切ない…。

冒頭「ロードムービー」と話したが、
この映画は車での会話や車に関わることが多い。
田舎では車が必要だ。
それは物理的にも、そして、どこか今の自分とは違う場所に行くためにも必要だ。
俺もここでうじうじしてないで、
車でも買おうかな、金ねぇな。