かつきよ

ボス・ベイビー ファミリー・ミッションのかつきよのレビュー・感想・評価

3.6
総評としては、無難+αレベルで面白かった!
前作「ボス・ベイビー」の正統派続編。

シンプルでわかりやすいストーリーに、Theエンタメノリ。頭空っぽにして見ても楽しめて、考察点はほとんど無い明快なストーリー!!サクッと気軽に鑑賞できるのもイイ!良質なエンタメ作品。

パワーアップしたところもあり、前作と共通しているところもあり、前作ネタも多く仕込まれていて、続編としてはかなりちゃんと作られてるなと思いました。
ただ、「The続編」ゆえに良かった点とイマイチだった点が混在してる印象です。

○よかった点ーーーーーーーーーーー

◆前作の直結の続編
◆前作ラストシーンからも繋がる
◆前作キャラやアイテムの出演
◆映像クオリティもパワーアップ

前作ラスト!ティムは2人目の娘を授かって、弟とも仲良しに大人になりました!ということで、続編はそれより前の時系列の子供時代の話になるか、「妹もエージェントのボス・ベイビー!?」という前作ラストの設定を活かして次世代ボスの話になるのか……

結果、どっちもでした!!

正確には、「次世代ボスベイビーの話」で娘のティナがエージェントという設定を軸に、レジェンドボスベイビーであるテッドおじさんに協力を仰ぎ「前作のボスベイビーも活躍する」という形のストーリー。
なので、前作の2人が大人になった後の話にもかかわらず、主人公はそのまま前作の2人!
スペシャルなミルクで前作の姿に戻って新たなミッションを遂行するという構成なので、画的な雰囲気も前作のまま!

時系列的にも、雰囲気もちゃんと1の続編として、普通なら相反する要素を両立させる脚本アイディアは素晴らしいなと感じました。

また、前作からの要素やアイテム(人形のメーメーや魔法使いの目覚まし時計)の続投ネタも多く、乖離した別作品ではなく、前作ありきのネタを濃く楽しめるのは今作の魅力の一つ。
前作でボスベイビーの部下だったベイビーの現在がちらりとわかったり、前作要素が至る所に出てくるのは、わかればわかるだけ嬉しいです。

◆兄弟の絆の描写に加えて親子の愛

大人になったとはいえ、前作に引き続きティムとテッドの兄弟の絆の描写はもちろん健在
ただ、今作は兄弟愛を焼き直すわけではなくて、父(ティム)とタビサ(上の娘)の親子関係がメインに描かれているのが良いなと思いました。
家族単位での絆の描写は幅広くなりましたし、ベタではありますが父と娘の絆のシーンにはグッとくること間違いなし。

◆魅力的なキャラクター

前作に引き続きムロツヨシさん演じるボスベイビーことテッドおじさんはもちろん、今回から新たに加わったテッドの家族の三人が皆いいキャラ!最終的には大好きになりました!

◆細かいネタ満載
◆やりすぎアクション
◆世界観

エンタメに振り切ってるだけあって、笑えるネタが満載!
前回はベイビーコーポレーションというとんでもない世界観を披露してくれたけど、今回の舞台は学校がメインに!
もはや英才教育と関係ないだろというお金かけすぎのハイテク学校のギミックは見てるだけでワクワクできます。

アクションに関してはもう、やりすぎ!の一言に尽きます。お酒飲んだ勢いでプロット書いたとしか思えない「そうはならんやろ!!」感満載で誰にも止められない暴走アクション
そういうの好きな人はずっと笑えると思います笑

○うーんと思った点ーーーーーーーー

◆蛇足感
◆2人の活躍の無理やり感

これは、もうどんな作品作ってもらってもある程度はしょうがないヤボな話なんですが、どうしても後付け感が最後まで拭えなかったですね。

というのも、前作が完璧に綺麗に完結しすぎてて……
娘のエージェント描写という〝引き〟はあったかもしれないけど、続編匂わせというよりは「それはまた別のお話」的な演出だと思っていたので。

もう大人になった2人が無理やり子供姿に戻る(しかもぴったり前作と同じ年齢に戻る)というのは、続編然とした続編をやるぞ!!という制作のご都合が見えすぎてしまって、悶々。
そもそも続編を望む声が多かったのだろうし、
その結果続編制作するとして
じゃあ大人2人を退場させるか?とか、大人2人を大人のまま活躍させるか?というと、今回の形が一番よかったのかなと思うので
考えられた中でもかなり良手だったとは思うのですが。
「続編」としてのプロットの作り込みは素直に尊敬しています

◆関係リセット

個人的にこれが1番大きいです!
反目していたキャラクター同士が、ストーリーを通して相互理解を深めていき、絆を構築する!!すごく好きなシナリオの映画!
それが、続編になると関係性が(少なくとも見た目上)リセットされる映画多すぎ問題!!!!
前作で感じた感情なんだったの!?前作で学んだ事は!?前作で結んだ絆は!?となってしまうのでこれが大の苦手なんです
残念なことにボスベイビーは若干これ系なんですよね

前作で固く家族の絆を誓い合ったセオドアくんとティム、疎遠になっているところからスタート。いや、子供の頃がいかに仲良くったって、大人になってお互い生活が変わればどんどんズレていくところもあって疎遠になる……というのはわかる!!!
でも、そんなところはリアルじゃなくていい!!!!!!!!!!!!!!喧嘩ばっかじゃない兄弟がいてもいいじゃん!!なかなか会えないけどすっごく仲良し!とかそれでいいじゃん!!そういう兄弟もリアルにいるし!

2人とも大人になって、関係性が変化していって、事情が変わってくるのは全然いい!
でも、「テッドはティムの結婚式に出ない」「ティムはテッドの卒園式に出ない」というのは2人とも前作で築いた関係性からすると、あまりにも薄情すぎませんか?2人とも仲が悪いように見えていたけど、実際はそうではなかった、という設定が後から明かされる(どうしても行けない事情があって実は今でも後悔していたとか、本当は出ていたけど照れ臭くて出てないことにしていたとか)とかもなく……

喧嘩ばっかりしててティナやタビサには2人が仲が悪いように見えていたけど、実は2人はめちゃくちゃ仲がいい(というのをおじいちゃんやおばあちゃんは知ってる)とかのほうがしっくりくるなと思います。でも、劇中の2人は心の底からギクシャクしてるようにしか見えなくて😂

実際の兄弟なんてそんなもん、なのかもしれませんが、(結婚式は出ろよとは思うけど)私としては仲良い兄弟であって欲しかった方が強くて、関係リセット感はズーンって感じでした

◆ティムの妄想癖が悪目立ち
◆相変わらず妄想なのかわからない

ティムの妄想癖が冒頭から凄くてドン引き!
前作でのティムは子供だったからまだ可愛げがあったけど、既婚者で子供2人もいる大人があの勢いでの妄想癖持ちだと、心配になるレベルで怖い
娘への愛とか、家族愛なんてものは感じられたけど、二児の父とは思えないほど前作からの人間的な成熟が見られなくて、終盤までティムにそこまで好感が持てなかったのが個人的に残念だった点。青年とか新米パパならまだ納得できるけど、上に娘がいる二児の父なら、もう少ししっかりしてくれていてもよかったんじゃないかなぁ……

そして、前作でもどこまでが妄想でどこまでが現実なのかわからずに大変混乱したのですが、今作も同じく。喋る目覚まし時計の魔法使いは最後の最後まで本当に動いて喋ってるのかどうかわからないし、それに対して大真面目に対応してるティムが怖くて……
あれは会話も頭の中の妄想なのか、本当に会話してるのか、側から見たらティムだけが会話しているように見えるのか(最後だったら一番怖い)わからない……
そもそも目覚まし時計の魔法使いが喋るギミックは映画的にどの要素にも繋がらないので、最後まで存在する意味のわからない表現のシーンでした。
やっぱりボスベイビーって、全部ティムの妄想なんじゃないかな?とすら思えて、また序盤で怖くなりました……
いや、妄想じゃない……!ってことでいいんですよね?💧

◇若干子供向け
◇前作に比べて若干浅い

前作は、子供も楽しく見られる一方で、大人も十分楽しめる傑作だ!と感じましたし、ボロ泣きしたのですが、今作はホロリとは来ても泣くまでは至らず、前作に比べてほんの少しだけ浅くなっちゃった気がしました。

というのも、前作は「赤ちゃんはベイビー社から派遣されたエージェントだった!」というとんでもない設定の中でも「泣き声1つで24時間いつでも両親を支配してしまう」という点で、本物の赤ちゃんもファミリーの「ボス」みたいなものだよな、、、というブラックジョーク的なリアルさが効いていて、ファンタジーの中にもリアリティが上手く織り込まれていました。弟の誕生によって、自分の居場所も、両親の愛も、望んでもいない第三者(少なくとも道理を分からない子供にとっては)に侵食されていく閉塞感とか理不尽さが妙にリアルだったんです。
そこから、弟と悪友のようになって、最後には新しい家族として望むようになるプロセスが、ファンタジックではちゃめちゃなストーリーの中でも丁寧に描かれていて、そのバランスに大変感動した訳ですが……

今作の兄弟の絆は、先にも触れたように関係リセットで焼き直しのような感じがしてしまったのは言うまでもなく。加えて、今作でメインに来る「父と娘の絆」は、悪くはないし感動もしたのですが、「よくあるやつ」とか、「よく見るやつ」とか、そんな感じに落ち着いてしまった気がします。よくいうと定番、悪くいうとベタ
前作ほどの深さは感じられなかったんですよね〜。

前作は「家族じゃない」存在が「家族になっていく過程」を描くところに私は感動したので、それに比べると今作って「最初から家族」の「絆や愛を再認識」する話なので
言ってしまえば前作は「ドタバタのファンタジックなコメディを通して家族のドラマを描こう!」と作られていた作品で、今作は「ボスベイビーの続編を作ろう!」というコンセプトの元作られている印象です。
どちらも素晴らしい事に変わりはなく、人によっては今作の雰囲気の方が好き!という人もいるのかなと思います。結局は好みの問題なのですが。

「ファミリーミッション」という副題の割には、母親があまり話に関わってこなかったり、エージェントのティナの活躍がサブメイン寄りだったり、結局は「兄弟」にばかりスポットが当たってる感じがしたのも個個人的には惜しいなと感じた点です。

○総評

コメディやエンタメとしては前作よりパワーアップしているし、前作のキャラクターたちの活躍もまた見られるので、前作ファンなら必見の映画!
はちゃめちゃドタバタのノリが楽しみたい!という気分の時にぴったりです!






※以下ネタバレ感想





























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ネタバレ有り












●キャラクターに関して

◇奥さん

残念なことに全然目立った活躍はしないのですが、数少ない登場シーンでも十分に魅力を感じられるキャラクターでした!深掘りしてほしい!
育児の頑張り、娘2人への愛がわかる基本的な人柄のよさ(さすがティムの奥さん!)はもちろん、盗聴はよくない!って言った後にコップを渡されてノリノリで盗聴しちゃうシーンとか、ラストシーンでティナ宛のエージェントからのミッションTellに出たあと、驚きつつもすぐに「続けて」と言っちゃう所とかに悪ノリの良さが垣間見えて、好感度が下がることがなかったキャラクターです
もっと活躍してほしかったー!
盗み聞きの時、ティムとテッドが「(おしゃぶりを)しゃぶれ!」「お前がしゃぶれ!」って会話してるのを聞いて、タビサを連れて(もうすでに買ってある)クリスマスツリーを買いに行くシーンが個人的にはめちゃくちゃ好き笑

◇ティナ

今作のエージェントベイビー!
前作のボスベイビーのポジションなので、主役級の抜擢……かと思いきや、音頭はとりつつ実働部隊はティムとテッドのコンビなので、中盤は活躍が少なめ。
基本的に有能で、意見も筋が通っていて価値観もしっかりしているので、ティムとテッドよりもよっぽど中身は大人な印象!笑
子供化した2人を隠蔽するための即席の作戦を練って実行したり、作戦のフォロー・軌道修正・テコ入れ、最後の機体を乗っ取ったアクションの活躍……彼女がいなければ成り立たなかった(むしろティナだけいればよかったのでは?)と思わせる有能ぶり
家族想いだしいい子なのですごく好き!!

ただ、疑問点がひとつ……!
正規の赤ちゃんはベイビーコーポレーションから派遣されてくる普通の赤ちゃんのはず。
その中で選別された赤ちゃんだけエージェントとして活躍していて、その赤ちゃんが派遣される場合って事件を解決したらコーポレーションに戻ってくるという世界観だったはず。
実際、レジェンドボスベイビーことセオドアは前作では事件解決後コーポレーションに戻って、両親には記憶消去が施されました。その後家族として正式派遣された際は、ボスベイビーとしての能力は無くなっていて、今作によるとボスベイビー時代の記憶も喪失しているはずなので、エージェント=一時期限定の赤ちゃん役、本物の赤ちゃん=エージェント能力はない、という方程式のはずなんですよね。
つまり、ティナがエージェントってことはテンプルトン家の〝一時〟赤ちゃんなのであって正式赤ちゃんではないのでは?と思うのですが……そのあたりはどうなのか……?細かいところかもしれませんが、こういう設定は徹底していただきたい派なので、割ともやもやしました。

◇タビサ

妹がエージェントで、お父さんと叔父さんが活躍して……お姉ちゃん一番キャラ薄くない?
と思ったのですが、そんなことなかった!!
今作の主役にしてヒロインと言っても過言ではない!
タビサちゃん可愛いし、最終的に一番好きなキャラクター!
前作のティムの声優さんがこちらで続投しているのも◎
前作でティムの好きなところ「声」の要素が大きかったので……!
あとは個人的に幼い天才キャラが大好きなので、部屋にある勉強ヲタク的なグッズとか、寝る前に読む数学ジョークとか、授業成績が他の追随を許さない断トツの所とか(そりゃ自分が評価マイナスでもティムが鼻高々になるのも納得)大好き!!

ただの勉強ヲタクなだけじゃなくて、女の子らしい一面もあるのがまた良い!
独唱のある発表会に、お父さんに「来てほしくないかもしれない」というのが、お父さんが嫌いな訳じゃなくて、「お父さんは芸術的な才能があるから、下手だって思われて落胆されたくない」「お父さんに自慢の娘だって思われたい」というのがわかった瞬間!「良い!!」ってなりましたね
お父さんと娘の間にある溝が、作中事件を通して復活する系の話かと思いきや、2人の間に溝なんて本当はなくて、最初から相思相愛だったんじゃん!!という!!笑

結局音痴(というかあがり症)問題を解決するのはティムの妄想世界にタビサを誘うこと、というのが、若干「はぁ〜?」って感じでしたが
あれはなに?ティムの固有結界的なものでしょうか。特殊能力……?
もう少し説得力があっても良かったかなとは思いました

問題の、タビサの独唱シーンですが、これがまた最高に演出が豪華!!!!笑
紅白よりもお金がかかってるんじゃないかという舞台装置!おそらく初めての舞台デビューがこのラスボス幸子並みの舞台装置でのソロって、誰でも緊張するよ!!!!!笑
歌唱力がまた絶妙で、評価点ですよね
見た方はわかると思いますが、あのとんでもない舞台装置と演出に対して、歌唱がTHEリアル少女!!!!
上手くない!!下手でもない!!等身大の女の子の歌声……!!なぜそこだけリアル!?
私としてはもうぶっちぎり超絶歌唱でも良かったと思うのですが、これはこれで絶妙な演出になり、印象に残らざるを得なかったので、ナイス演技でした……!

会場中の人全員洗脳完了したタイミング的にも、タビサちゃんの迫力(というか舞台装置の迫力?) は相当なものだったと思います!生で見てみたかった笑
みんながみんな(自分の子供じゃなくても)写真を撮ってしまうというのは凄まじい……
あんなに緊張していた大役を見事やり遂げた直後、客席を見れば全員俯き笑顔も喝采もない、心の支えだった父の席には誰も座っていない!!!!
こんなん相当なトラウマですよね
精神崩壊してもおかしくないレベルのトラウマ案件だと思うのですが、ちょっと泣いただけでそのあとはストーリーのドタバタの流れで心理描写が浅かったのが若干残念
ずっと会場にはいたのかもしれないけど、結局お父さん、タビサちゃんの晴れ舞台は見れてない訳だし
そこはどんな形でもいいからちゃんとみてて欲しかったなぁ

◇テッド

前作のボスベイビーこと、セオドア・テンプルトン君。
兄弟仲のリセット演出に関しては何度も述べていますが、それに加えて、また「孤独なボス」に逆戻りしているのがはたまた「リセット」な感じがして、うーんという感じでした。
前作でせっかく「孤独なボス」を脱出してティムと手を取り合って「家族」という居場所を見つけたのに、、、?
ボスは孤独だぞ、とティムに語るシーンなんかは、「それ、前作で解決したじゃん!」という気持ちになって、少し残念でした😥

◇今回のヴィラン

英才教育を受けたがゆえに天才覚醒してしまった赤ちゃん!!
いや、天才すぎる
ああいう異分子はベイビーコーポレーションでエージェント側に回すはずなのでは……?
赤ちゃんそのものの才能ではなく、両親の教育による効果が絶大だったのか
とにかく甘いものが大好きなのは、脳が活性化しすぎていて、糖分を脳が欲しているということなのだろうか

猿にタイプライターを打たせればシェイクスピアを打ち出す可能性があるという空想化学?から着想を得て赤ちゃんにアプリ開発させるのはぶっ飛びすぎてる😂
でも、たびたび登場するカメラアプリがbデイの伏線になっていたのはよかった!
コメディ映画とはいえ細かい伏線が数多く機能しているのは◎

●他

3Dメガネの映画館客がずっと「リアルだー!」っていいながら引っ張られてるの地味に笑う笑

アプリで写真撮ったのを叩き落とされたおじいちゃんが、ドヤ顔でちゃんとしたカメラ使うのも好き

ティムのパパママ、つまりおじいちゃんおばあちゃん、今作でもわりと出てきていて嬉しかったです!
かつきよ

かつきよ