踊る猫

希望の灯りの踊る猫のレビュー・感想・評価

希望の灯り(2018年製作の映画)
4.1
静かな映画だ。そして無骨でもある。そしてその無骨さは、丁寧な職人間で支えられていると見た。今でいうマックジョブというか、昇給も昇進も「希望」として持てない職につく男が人妻と恋をして、ささやかな幸せを手に入れるという話なのだけれど語り口に無理はなく背伸びをしたところもない。あざとさが感じられないのだ。そこがいいと思った。寡黙な主人公は自らの過去をなにも語らない。全身にタトゥーを入れるほどだからよほどやんちゃなことをしたのだろうと思うのだけれど、ワルぶったところを全然見せずに淡々と職をこなす。それが、隠された主人公の過去を想像させるようでそう考えると実は巧みなストーリーテリングの妙が働いていると言える。もう少し光るシーンがあればと思われたし、ストーリーの起伏としてももうひと捻りふた捻りあればと思ってしまったので相対的に点は低くなってしまう(「捻り」が効いているという意味では、この手の映画を撮り続けるケン・ローチは流石に巧いな、と思ってしまった)。だが、語弊のある言い方をするが社会への刃にのみクローズアップするのではなく、あくまでも人々の幸福な暮らしを描写することを選んだこの監督のスタンスは嫌いになれない(むろん、暮らしと政治は立派に両立して主張できることを踏まえた上で、敢えてこの映画をこのように評価する)。
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