マヒロ

Papers, Please: The Short Film(原題)のマヒロのレビュー・感想・評価

3.0
架空の共産国家・アルストツカにて、隣国との国境で入国審査官を任された男を描いた短編作品。

同名のゲーム『papers,please』を基にした作品で、ゲームの製作者であり今作の脚本にも関わっているルーカス・ポープ氏は日本在住のアメリカ人だが、ゲームの世界観に合わせてロシアで制作していたりと短編ながら割と気合の入った一作。
(自分は原作プレイ済み)

原作は入管にやってきた人のパスポート他必要書類を見て名前や有効期限などに不備がないかを確認していきつつ、日が経つにつれて国の都合でみるみる増えていく確認書類の枚数に辟易していくというお役所仕事体験ゲームみたいなもので、歩合制(処理した人数で給料が変わる)なので早く処理したいが間違えると減給されてしまうので慎重に見なければいけない……みたいなちょっとしたスリルもあり、シンプルながら面白い。

原作には体制を狙うテロ組織が出てきたり、疫病の流行がゲーム性に影響したりといったイベントもあるが、こちらではそこまで深掘りせずに、あくまでゲームの基本システムを映像化しただけという感じ。やったことがない人が観て面白いかと言われると微妙なところだが、原作で印象的な登場人物がしっかり出てるし、音楽もほぼそのままのアレンジ版が使われてたりと既プレイ者としては楽しめた。ゲームのグラフィックがあえて前時代的な粗いものなので、実写で入管受付の中が見られただけでも嬉しい。このクオリティなら10分と言わずにもっと観てみたいなと思えるくらいには良かった。

余談になるが、原作のポープ氏がこの後に作った『Return of the Obradin』というゲームが大傑作なので、同じようにゲームの世界観を拡げてくれるような実写版が見てみたい……。

(2021.133)
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