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ライトハウスのumisodachiのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.6


4週間の灯台守をしに孤島にやってきたふたりの男。年老いた男は灯台に若い男を近づけず、過酷な労働をすべて若い男に押し付ける。夜な夜な酒を飲みながら繰り返される年老いた男の長話に嫌気がさすものの、逃げ場がないので従うしかない若い男。やがて、若い男は現実と幻覚の狭間で苦しみ始める……。

ウィレム・デフォーとロバート・パティソンのふたり芝居。強烈なパワハラ野郎のウィレム・デフォーと、鬱々として影のあるロバート・パティソンの濃厚なぶつかり合いを堪能できる作品だ。

ウィレム・デフォーの話す英語が独特すぎて(昔風)、英語字幕で見ても聞き取れずに苦しんだものの、途中で「これは全部聞きとる必要ないやつなのね」と悟った。対するロバート・パティソンの英語は非常に聞き取りやすかったので(こちらも訛りはキツいみただけど私にはわからず)、ストーリーや雰囲気を理解するには問題がなかった。

のっけから高圧的にキレ散らかすウィレム・デフォーにちょっと驚きつつ、仕方なく従うロバート・パティソンにもストレスが溜まる。ロバート・パティソンには大きな秘密があることが後にわかるのだが、それにしても言うこと聞きすぎだろとイライラ。正方形の白黒映像の閉そく感と相まって、見ているこちらまで息苦しさを覚える。

さらに、「ひー、パワハラきつー」と思いながら観ていると、次第に妙にセクシャルな映画だなと気づき始める。人魚の像を手に夜な夜な自慰にふけるロバパティや、性器を象徴するような灯台の映し方など、変態的な映像演出が目についてくる。さらに、後半では嵐で閉じ込められたふたりが頻繁に酔っ払って盛り上がったり喧嘩したりするのだが、いまにもキスしそうなほど接近したりしてハラハラ。激しく対立しつつも同性愛的な要素も感じられる濃い時間が延々と繰り返されていく。

ジャンルとしてはホラーらしいが、怖いというより不気味。もっというと、終盤になるにつれて増していく変態的な要素にはちょっと笑いがこみ上げてきた。ギリシャ神話をモチーフにした幻想的なストーリー展開は異様だし、結末は「うげっ」と思う衝撃的なものだったが、短い上映時間もあって疲弊する感じではなかった(少なくとも私は)。ふたりの演技を楽しむホラーコメディという感じかなあ。やたらオナラばっかりするウィレム・デフォーもおもしろいし。日本語字幕でもう1度観たい。


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