カツマ

チャンブラにてのカツマのレビュー・感想・評価

チャンブラにて(2017年製作の映画)
3.5
イタリア映画祭2本目の鑑賞は今年のアカデミー賞の外国語映画賞候補にイタリア代表として送り込まれた『チャンブラにて』。あのマーティン・スコセッシが絶賛したという、イタリア映画シーン屈指の有望株ジョナス・カルピニャーノ監督作品です。

ジョナス・カルピニャーノ監督は長編デビュー作の『地中海』にて、アフリカから夢を求めてイタリアへと移住してきた移民たちの物語をすでに描いているが、今作はアジア系ジプシー民族ロマにスポットライトをあてた、やはり移民を題材にした作品。
何とロマの登場人物は全員が実名。監督が実際に彼らから窃盗被害にあったことが出会いだったという、嘘のような驚愕のキャスティングも面白い。

14歳のピオはチャンブラ通りに住むジプシー民族ロマの一家の少年。一家は窃盗を働くことで何とか大家族の生活を維持してきたが、ピオの父や兄が窃盗容疑で逮捕され投獄されてしまう。そんな中、ピオは家族の家計を支えるために、単身盗みに出ることに。年上の黒人の友人アイヴァの協力を得て、ピオは何とか小金を作り続け、アフリカ人たちとのコミュニティにも馴染み始めていたのだが・・。

ジプシー民族ロマにとっては窃盗で生計を立てるのが当たり前の世界。子供は酒を食らいタバコを吸い、車を運転する。彼らは我々の常識とはかけ離れた生活を送っていた。だが、そんな生活には限界があり、ピオは生きていくために非情な決断を迫られる。移民が生きていくほどのスペースがこの世界にはもう残されていないのか。重すぎる命題を抱えたまま、ピオの涙は乾いていき、また生きていくための日々が、出口の見えないトンネルのように大きな穴を開けていた。
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