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軽い男じゃないのよのkuuのレビュー・感想・評価

軽い男じゃないのよ(2018年製作の映画)
3.5
『軽い男じゃないのよ』
原題 Je ne suis pas un homme facile.
製作年 2018年。上映時間 98分。

男女の立場が逆転した世界を舞台に描いたNetflix製フレンチコメディ。
(今作品は、フランス製の最初のNetflixオリジナル映画だそうです。)
主演は『歓楽通り』のバンサン・エルバズ。

常日頃から女性を見下して生きてきた独身男性ダミアンは、街中で頭を打って気絶したことをきっかけに、不思議な世界に迷い込んでしまう。
そこは女性ばかりが社会で活躍し、男性は差別的な扱いを受けながら家事や子育てに従事する男女逆転の世界だった。
戸惑いながらも、人気女性作家の助手として働きはじめるダミアンだったが。。。

今作品は、180度男女逆転した作品であり、明らかに映画の趣旨を、キツめのミソジニー寄りの人にとっては単純にうつる作品と云えるかな。
これは、女性にとってどのような世界が感じられるかを、実行したものでした。
プロットは、何千年もの間、対象化され、過激に書けば虐待されたともとれる性別に割り当てられている感覚の不穏な共感を強制するもので、これが全体のポイントなんかなぁと。
180度ひっくり返った陳腐なパイロット版やととれなくらないけど、世の中が女性をどう扱っているかを示すという点やと、ここがポイントなんやと思います。
目的は、
『真の平等』を示すことでも、『真摯な男女逆転のオリジナルな方法』
を示すことでもなく、普通の女性の目から見て、この世界で生きることがどのように感じられるかを、無知な男性に示すこと。
今作品は、1シーン1シーンが、家父長制の世界で育った人たちなら多少は感じてたことやろし、文字通り、日常的に見ていたことも含んでる話なんやろて思います。
ある種の観てる側を不安にさせる点もあるとは思います。
フェミニズムに深い考察をもってるとは云えませんし、偉そうな事を書いてるやもしれませんが、今作品が単純にうつったのなら、フェミニズムの理論や歴史の重要な部分にふれてきてないんかなぁと。
今作品では、フェミニズムの理論や歴史の多くの側面が、ユーモラスな方法で伝えられており、それは悪くなかった。
例えば、横になって出産するのは、男性の王が出産の一部始終を見て楽しむために考案したものやし。
立って重力を利用するのが一番いい出産方法であり、仰向けは母体にも赤ちゃんにも害があるが、現代医学でもこの不穏な伝統が受け継がれている。
(だから、あのシーンは、このフェミニズムの歴史的事実への言及やったともとれる)
サイトから引用した説明やけど。『1643年から1715年までフランスを統治したルイ14世は、横たわる姿勢を普及させるために大きな役割を果たした。。。
非常に奇妙な理由である。
伝説によると(そして一握りの医学者によると)、ルイ14世は妻と愛人の間に22人以上の子供をもうけたが、女性の出産を見るのが好きだったという。
社会学のローレン・ダンデス教授は、ルイ14世は愛人の出産を(楽しんで)見てと、直立姿勢やしゃがんだ姿勢は、その過程を(邪魔する)として嫌っていたと書いている。』
ルイ14世変態やん。
これは、家父長制の快楽が女性を最後の一滴まで搾取するという暗い過去を知らなければ、誰もが見逃してしまう小さなディテールやと思う。
他にも、巧妙かつユーモラスな方法で提示されたフェミニスト史の詳細はたくさんあったけど、ネタバレに触れるので、これくらいにしますが、個人的には興味を惹く作品でした。
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