踊る猫

バーニング 劇場版の踊る猫のレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
4.1
感じたのは、これまでのイ・チャンドン作品では影に隠れていた印象がある「哀切さ」だった。それは原作が村上春樹の短編であることと無関係ではないだろう。ハルキ・ワールドのエッセンスを散りばめて(男ふたりと女ひとりの奇妙な三角関係、ジャズ、フォークナーへの言及、猫等など)、春樹が描いたメランコリーを更に洗練された手つきで増幅させようと試みたのではないかと思う。だが、それは成功しただろうか? なるほどこれまでの作品で誇示されていた長回しを捨ててスッキリした撮り方で纏め、夕陽をバックに女性が半裸を晒して大麻でトリップした場面の美しさを魅せるなど見どころはある。しかし、この長さは蛇足の感があるしストーリーにもツッコミどころもあり、そのツッコミどころを「寓話」と好意的に解釈させるにはリアルな韓国事情を含ませ過ぎて、結果としてどっちつかずになったのではないだろうか、と思う。キーワードは「不在」だろう。蜜柑の不在から始まり女性の不在(の帰結としてのオナニー)、真実の不在。リアルとアンリアルが溶け合うトリップ感は良く出ている。
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