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ピータールー マンチェスターの悲劇/ピータールーの虐殺のBigsのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

うーん、民主主義の大事さを痛感させられる映画。不幸なことに、日本ではタイムリーで、その行く末が恐ろしくも感じる。

民主主義の重要性を痛感する。庶民の代表に政治を行わせる。参政権で庶民の声を政治に反映させる。今我々が当たり前のように享受している権利は先人達のこのような悲劇の上に成り立っているのだと。我々が怠けてその犠牲を無駄にすることは許されないし、何より自分たちのためにもこの権利を保持していかないといけないと思った。

愚かな権力者(国王)、権力者たちに優遇される地主や雇用主、本来公正であるべき機関が権力者におもねる(判事たち)、そして直接的に暴力を振るう組織(軍隊)。これらが結託して悲劇が起きる。この構造は、それぞれ置き換えると今の日本を見ているかのよう。マスメディアが反体制的に機能していることが、この映画の中で唯一の救いであり、これがあったから今日に繋がるのだけど、今の日本はメディアも機能していないように見えることもあり、更に恐ろしい状況ともいえる。

体制側が暴力を振るい出したときの恐ろしさがラストに集約される。圧倒的で止めることのできない暴力の恐ろしさ。女性、老人関係なく刃と拳を向け、赤子も踏みつけにされる。ここの見せ方も怖くて、初めは剣で切っているようだけど聞こえるのが音だけで、遠くから見ている群衆のよう。その様子が徐々に明らかになり、途中から明らかにギアが入って容赦なく躊躇なく刃を向ける残酷さ、軍隊の圧倒的な武力(馬に乗ってて位置が高い、統率され前進を止めない)を肌で感じる、まるでこの場に居合わせるかのように。

この中で語られる圧政が他人事ではない。無理な税制、権力者の搾取、不当逮捕、民衆の主張が公権力で弾圧される、戦争に駆り出される庶民たち。まさに今の日本、そして世界の惨状とリンクする。
日本はいまのところ戦争は放棄してるがそれさえも今後揺らぎかねない。(日本も体制側に従わなければ不当逮捕逮捕される、暴力を振るわれるという日がいつか来そうで恐ろしい。)

ファーストカットは戦場で只々うろたえる一兵士(軍楽隊?)。
序盤は日中明るい屋外で戦争から帰る兵士と、暗い屋内で腐敗した政治を行う体制側が交互に描かれる。明るさや情景等で、まずこの映画が「腐敗した体制側」と「その犠牲となる庶民たち」の話だということが端的にわかり上手いなと思った。

体制側がこれでもかという嫌さで描かれ、この上なく不快。
無茶苦茶な裁判3連発の嫌さ。コート盗んだだけで絞首刑って。。。
この判事4人衆が恐ろしく不愉快。特に横暴なやつと小物感が強いやつが印象的。
最後の惨状を見て笑ってたりとか。
「法で以って厳罰に処すのが効果的」とか。

王太子もこれ以上ないくらい、醜く愚かに描かれていたなあ。ラストがほんと嫌だった。妃の「平穏」ってセリフも。

途中用事があると言っていた将軍は競馬に行ってたのか。軍隊の馬→競馬の馬っていうシーンの繋ぎは意地悪だったなあ。本作中、数少ないユーモラス(非常にブラックだけど)な展開だった。

作り手側は、徹底して武力による革命に対しNOを示しているのが印象的。
"リバティ オア デス"の人たちだったり、最後舞台を降ろされる人だったり。

陰影が濃く付いた絵面が多く、時折絵画のような美しい構図もあり(人物たちの配置、遠景ショット)、良かった。

ただ個人的な好みとして、普段映画に「ド派手なもの」、「ケレン味」、「悪趣味さ」、「目新しいもの」を求める人間としては、真反対の映画だったので少し物足りない気も。
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